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理化学研究所の絶妙のパフォーマンス

「解体的出直し」で「名」も「実」も変わらない儀式的対応の名人芸

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

 昨年起きた「STAP細胞不正事件」で、理化学研究所(略称「理研」)改革委員会(岸輝雄委員長)は、理研に「解体的出直し」を求めた。それに対し、理研は昨年8月27日、再発防止へ向けた4つの柱からなるアクションプランを発表した。その1つの柱が「発生・再生科学総合研究センターの解体的出直し」だ。

拡大理研の多細胞システム形成研究センター(旧発生・再生科学総合研究センター)=神戸市中央区

 そして、昨年11月21日に発生・再生科学総合研究センターが「多細胞システム形成研究センター」と名を改め、組織が再編された。また、先日、新センター長として現在大阪大学大学院生命機能研究科教授の濱田博司氏の内定が発表された。これらの再編により2015年4月より名実ともに新たな理化学研究所「多細胞システム形成研究センター」がスタートする。

 しかし、実はそうではない。これは、「名」も「実」も何も変わらない理研のパフォーマンスなのだ。一見変わったように見せて、中身は変わらない。上からの「儀式的な」攻撃に、理研は「儀式的に」応戦したのだ。ここまでくると「あっぱれ」と拍手を送りたくなる。英語でいえば「Two Thumbs Up!」だ。

解体的出直しの主要な7点

 理研「発生・再生科学総合研究センター」は、「Center for Developmental Biology」という英語名で、世界中の研究者の間では通称CDB(シー・ディー・ビー)と呼ばれ、高い知名度を誇っていた。

 その「解体的出直し」の主な内容は、

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筆者

佐藤匠徳

佐藤匠徳(さとう・なるとく) 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)佐藤匠徳特別研究所 特別研究所長。独立行政法人 科学技術振興機構(JST)ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括・米国コーネル大学教授・豪州センテナリー研究所教授(兼任)。1985年筑波大学生物学類卒業後、1988年米国ジョージタウン大学神経生物学専攻にてPh.D.取得。ハーバード大学医学部助教授、テキサス大学サウスウエスタン医科大学教授、コーネル大学医学部Joseph C. Hinsey Professorを歴任後、2009年に帰国、2014年まで奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)バイオサイエンス研究科教授。2014年7月にNAIST退職後、2014年8月1日より現職。専門は、心血管系の分子生物学、ライブ予測制御学、組織再生工学。【2017年6月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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