メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

北欧で母親教授が多いわけ

本当の意味での家庭との両立が、研究の発展につながる

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデンのスペース物理研究所
 私の勤め先であるスペース物理研究所(スウェーデンで唯一の文部省直轄の国立研究所)で、今年ようやく女性教授の数が男性教授の数と同じになった。といっても女性教授が増えたわけでも男性教授が減ったわけでもない。女性教授が他大学に移ってしまって(引き抜かれて)、その結果、男1女1になったのである。後釜は埋まっておらず、部門長を所長が兼任している。所長こそ男性だが、それとて真っ先に推薦された女性教授が断ったために男性に回っているのだ。

 研究所はスウェーデン最北の都市(北極圏内)という地理的特徴を生かした地上観測と、宇宙探査という超長期的視野の必要な研究が主力であることから(日本の宇宙科学研究所と極地研究所の研究部門だけを足し合わせたようなもの)、理学と工学の中間の性質を兼ねている。従って、部門長(教授)には、科学者としての名声だけでなく、観測装置や、その設置・設計にもある程度の知識・経験のあるものが選ばれる。

 そんな研究所で、今まで女性教授の方が多かったのである。3年前に1人亡くなるまでは3人の女性教授がいた。この教授ポストは日本で時折みられるような「女性優先」ポストでは決してない。3人のうちの2人はスウェーデン王立アカデミー(ノーベル物理・化学賞の選考組織)のメンバーであり、3人目も独力で自分の分野を切り開いた人だ。さらに3人とも母親(子供は計7人)であって、日本のように「仕事か子供か」の二者択一を迫られたわけではない。

 日本では考えられない光景ではあるまいか。特に研究所の業務を考えるなら、日本に限らず、ほとんどの国で「オヤジ集団」を思い浮かべるだろう。だが、北欧は少し違うのである。

シーラ カークウッド(Sheila Kirkwood)教授。このころは小学生の子どもがいた=南極

 まず、

・・・ログインして読む
(残り:約2380文字/本文:約3088文字)