メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

一体どうなる日本のライフサイエンス!

日本版NIH始動で懸念される「負の影響」

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

 「さきがけ」からライフサイエンス分野が消えた。「さきがけ」とは、1991年に発足して以来四半世紀にわたり、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が「時代を先駆ける科学技術の芽を創ることを目的とする事業」として、将来非常に有望な若手(30歳から40歳前半)研究者を厳選し、比較的寛大な研究費を支給することでサポートしてきたプログラムだ。「さきがけ」に採択されることは、日本の若手研究者にとっては、ステータスシンボルであり、多くの「さきがけ卒業生」は、それぞれの研究分野で、現在も国内外において大活躍している。このような歴史も実績もあるファンディング事業から、ライフサイエンス分野が消えてしまったのだ。

 3月12日に発表された平成27年度の「さきがけ」研究提案予告の内、ライフサイエンス分野のテーマは前年度から継続される二つのみであり、新規のライフサイエンス分野は皆無だ。また、前年度から継続される二つのテーマ(「統合1細胞解析のための革新的技術基盤」「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」)は、ライフそのものの研究ではなく、技術開発を研究対象としている。

 また、これまで「さきがけ」とならんでJSTのフラッグシップ事業として1981年から35年間続けてきた創造科学技術推進事業(Exploratory Research for Advanced Technology;ERATO)からもライフサイエンス分野は消えてしまった。ERATOは「さきがけ」よりはもう少しシニアな中堅レベル(30歳後半から50歳前半)をリーダー(研究総括と呼ばれている)に決め、「卓越したリーダーの元、独創性に富んだ探索型基礎研究」をするものだ。そして、その多くの研究総括は、その後も新たな研究分野を切り開き、世界トップレベルのリーダーとして研究を牽引している。しかし、2013年に筆者が研究総括に選ばれたのを最後に、ライフサイエンス分野はERATOから消滅した。

 このように、これまで日本の基礎科学研究を支えてきたJSTの「さきがけ」と「ERATO」という二つのフラッグシップ事業からライフサイエンスの分野が消えてしまった(そして、実はJSTのもうひとつの事業であるCRESTからもライフサイエンス分野は消滅した)のは、今年4月から独立行政法人「日本医療研究開発機構」(Agency for Medical Research and Development: AMED、日本版NIHと呼ばれていたもの)が発足するからだ。

 AMEDは、 ・・・ログインして読む
(残り:約1530文字/本文:約2608文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

佐藤匠徳

佐藤匠徳(さとう・なるとく) 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)佐藤匠徳特別研究所 特別研究所長。独立行政法人 科学技術振興機構(JST)ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括・米国コーネル大学教授・豪州センテナリー研究所教授(兼任)。1985年筑波大学生物学類卒業後、1988年米国ジョージタウン大学神経生物学専攻にてPh.D.取得。ハーバード大学医学部助教授、テキサス大学サウスウエスタン医科大学教授、コーネル大学医学部Joseph C. Hinsey Professorを歴任後、2009年に帰国、2014年まで奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)バイオサイエンス研究科教授。2014年7月にNAIST退職後、2014年8月1日より現職。専門は、心血管系の分子生物学、ライブ予測制御学、組織再生工学。【2017年6月WEBRONZA退任】

佐藤匠徳の記事

もっと見る