早稲田大の「取り消しだが1年間の猶予」はやはり不可解
2015年04月10日
東京大学と早稲田大学。2つの大学の博士号に関する姿勢の違いを際だたせる結果になった。
東京大学は3月27日、分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授が率いた研究室で論文不正にかかわった元大学院生ら3人に授与した博士号を取り消したと発表した。3人は加藤元教授のもとで研究に携わり、2005~07年に博士号を取得していた。
加藤元教授研究室の論文不正問題で東大は昨年12月、論文33本に捏造や改ざんがあったと認定し、11人が関与していたとする最終報告を発表している。加藤元教授ら教員だった6人を懲戒処分相当とした。
この一方、早稲田大学は昨年10月、理化学研究所の元研究員、小保方晴子氏に授与した博士号について「取り消し」としながら、約1年間の猶予期間を設けている。訂正して博士論文としてふさわしいものになったと判断した場合は、博士号を取り消すことなく維持するとしている。
東大の調査によると、博士号を取り消された3人は、それぞれが提出した博士論文で、自ら図の捏造や改ざんをして論文に使ったと認定された。不正行為があった部分は論文全体の論旨に重要な意味をもち、博士論文としての評価に影響があるとされた。
東大の学位規則では、「不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したとき」には学位を取り消すとしている。今回、この取り消し基準に該当すると判断された。3人から異議は出なかったという。
昨年12月までの論文不正調査で不正が認定され、博士号を授与されていた元大学院生らは6人いた。博士号取り消しになった3人以外の3人については、不正の程度や論旨への影響などを検討した結果、取り消し基準に該当しないと判断された。
東大での博士の学位取り消しは、これが創学以来3件目にあたる。
記者会見した相原博昭理事・副学長は、「博士の学位授与を取り消す事態となったことは極めて遺憾」との声明を発表した。
論文不正問題で懲戒相当とされた元東大特任講師に関しては、博士号を授与していた徳島大が昨年12月、博士号を取り消している。
一方で、早稲田大の「猶予」決定と比較して、「こういう処分を毅然とするだけ、東大は早稲田より遥かにマシ」などという意見も表明されている。
早稲田大の対応はやはり不可解だ。
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