プロ棋士が「ハメ手」でソフトに勝利
2015年04月17日
将棋「電王戦 FINAL」の最終第5局、ソフト「AWAKE」(将棋ソフト世界選手権優勝)対 阿久津主税8段の一局は、衝撃の結末で終わった(千駄ヶ谷の将棋会館、4月11日) 。本シリーズ2勝2敗の後を受けた注目の決勝局、始まったばかりの序盤で、ソフト側(開発者)がなんと突然投了したのだ。
第2局(ソフト「Selene」対 永瀬拓矢6段)で起きた「ソフトの王手無視、反則負け」のハプニングについて、本欄に書いたばかりだ(「将棋「電王戦」:前代未聞の椿事で人間側が2連勝〜プロ棋士とソフトの真剣勝負で起きた「想定外」、そしてその文明論的な含蓄」)。今度は何が起きたのか。
ハプニング続きの今回の「電王戦 FINALシリーズ」、人間対人工知能の広い視点からどう総括するべきか。整理しておきたい。
将棋1局の総手数は平均110手ぐらいと言われている。ちなみに先の名人戦第1局(4/8〜9、羽生善治名人対行方尚史8段)は60手で羽生が勝ち、名人戦史上最短手数として話題になった。今回の「21手で終局」がいかに異常かわかるだろう。 持ち時間各5時間、朝から夜更けまで丸1日予定のイベントが、わずか49分で終わってしまった。
生中継をしていたニコニコ動画のサイトには、「勝負はこれからが佳境」と普通に考えて入場した観客に加え、「事件」の噂を聞きつけた野次馬が殺到した。ニコ動の観客数は終局後急増し、またたく間に10万人を突破。回線混雑で放送も途切れがち、視聴者からのコメントもさばき切れない有様だ。夜には団体戦を総括する会見が予定されていたが、関係者の到着が間に合わない。急遽プロ同士のエキジビションマッチで急場をしのぐ等、てんやわんやの騒ぎとなった。
実は阿久津8段は、ソフトのこの弱点をあらかじめ知っていた。(前回までプロ側が大幅に負け越したことを踏まえた)新ルールで、対局に使うソフトが練習用として対戦棋士に貸与されていた。その練習数日ですでに、ある局面でソフトがだまされて悪手を指すことを発見していた。「(投了されなかったとしても)相当優勢になると思っていた」という。
将棋には「ハメ手」という概念がある。本筋の手ではないが、甘いワナを仕掛け、相手がそれにかかるとカウンターパンチで一気に勝勢にしてしまう、そういう手のことだ。阿久津8段は
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