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就活中心の大学院修士課程への疑問

大学だからこそ出来る教育を行えない大学院は必要ない

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

 4月になり新入生が大学へ入ってきた。本稿では、筆者が専門とする生命科学の大学院修士課程について、日ごろ感じていることを論じたい。結論を先に言えば、日本の生命科学系の大学院修士課程(博士前期課程とも呼ばれている)は就活に蚕食されており、このままなら取りつぶした方が良い(ここで、断っておくが、筆者の経験は生命科学系の大学院のみなので、以下に述べる点は文系分野はもちろん、他の理系分野にも必ずしも当てはまらない可能性がある)。

 暴論と思われるかもしれないが、米国の大学院で博士号を取り、その後米国の大学院で15年間大学院生の教育にたずさわった後、2009年に日本に戻り、奈良先端科学技術大学院大学で約5年間教育してきた筆者の実感である。もし、大学院修士課程の教育が今後も現行のままであるならば、大学院は5年一貫の博士課程のみで十分だと考える。以下に、その理由を述べる。

 現在、大学院修士課程にくる学生の進学動機・目的を分類すると、大きく6つに分けられる。

【就職浪人】
学部時に就活を行ったが(希望する)就職ができなかったため、とりあえず入学する者。

【就職のためのスキル向上】
就職のためにより高度な知識とスキルを身につけるために入学する者。

【就職のために「修士号」という名札が必要】
雇用者側(会社、高校などの学校、各種団体など)などが、雇用の条件として修士号を求めているという情報を得たために入学する者。

【分野変更】
学部のときの専門分野(例えば文系)とは違う分野の学位を取りたいため入学する者。

【とりあえず】
将来何をやりたいかわからないため、とりあえず入学する者。

【先ずは修士】
博士号を習得するという「オプション」もひとつの可能性として考えているが、先ずは修士号を目指し、その過程で自分の能力、資質、興味などを考えてから博士号を目指すのか就職するのかを決めたい者。

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筆者

佐藤匠徳

佐藤匠徳(さとう・なるとく) 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)佐藤匠徳特別研究所 特別研究所長。独立行政法人 科学技術振興機構(JST)ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括・米国コーネル大学教授・豪州センテナリー研究所教授(兼任)。1985年筑波大学生物学類卒業後、1988年米国ジョージタウン大学神経生物学専攻にてPh.D.取得。ハーバード大学医学部助教授、テキサス大学サウスウエスタン医科大学教授、コーネル大学医学部Joseph C. Hinsey Professorを歴任後、2009年に帰国、2014年まで奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)バイオサイエンス研究科教授。2014年7月にNAIST退職後、2014年8月1日より現職。専門は、心血管系の分子生物学、ライブ予測制御学、組織再生工学。【2017年6月WEBRONZA退任】

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