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数字の暗記より数量の把握を

年号を覚えさせるより「億」の数字を実感できるようにする教育が必要だ

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 300円と300万円は4桁違うし、300万円と300億円は4桁違う。そういう意味では全然違う金額だ。だが、これを抽象化して同等に扱うのが数学だ。たとえば、300円と310円の違いと300万円と310万円の違い、300億円と310億円の違いは、 桁が違うだけで比率だけ見れば同等だ。

 しかし、同じ質問が社会や理科で出されたらどうだろう? 話は簡単ではない。本稿ではこの問題を考えたい。

消費税率8%への引き上げ前日に値札の切り替え作業をするスーパーの店員=2014年3月31日、福岡市東区、上田幸一撮影

 まず、消費税の引き上げの影響を考えてみる。購買意欲に対する影響は金額によって異なる。300円のものが310円になったところで、高くなったと実感こそすれ、10円で買えるものがほとんどない以上、損得感も薄い。だが、300万円のものが310万円になったら、10万円という生活実感上で大きな差に結びつく。しかも300円の商品は日常品が多いから値上げした所で買わざるを得ないが、300万円の商品となると、わずかの値段の差にも慎重になる。そして、この差は、企業レベル、つまり億単位の金の動く世界ではもっと重要になる。つまり最初から%で分かっている金額の差は、金額が高ければ高いほど人は敏感になる。

 もっとも、この答えは半分しか正しくない。一般人の視点と企業の視点が混在しているからだ。一般人の視点だけに統一すると、今度は300億円も300億円も同じになってしまう。自分が実際に使う金額の上限を超えると、突然「他人ごと」になってしまうからだ。

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