橘川委員の発言から見た電源構成案の問題点
2015年05月11日
経済産業省は4月28日、総合資源エネルギー調査会長期エネルギー需給見通し小委員会に、2030年の電源構成(エネルギーミックス)案を示した。発電量のうち、焦点の原発は20~22%、再生可能エネルギーは22~24%という数字だった。地球温暖化防止やエネルギー安全保障という課題を前に、この国のエネルギーの将来像をどう描こうとしているのか。案からは、何の理念も哲学も感じられず、単なる数合わせにしか見えない。
案が示された28日の第8回小委員会での、委員の橘川武郎・東京理科大大学院教授の発言が、電源構成案のいいかげんさや、この間の議論のプロセスの異常さを見事に言い当てている。橘川教授の発言を引きながら、今回の電源構成案の問題点を考えたい。
この委員会は宮沢大臣の諮問を受けて、電源ミックス、一次エネルギーミックスをつくれということで、今日、初めてミックスの原案が出てきたが、大臣は関係閣僚会議で原案を言われたという。この委員会は何のためにやっているのかよく分からない。
関係閣僚会議どころではない。メディア各社は、4月23日夜のテレビニュースや24日朝刊で、経産省の電源構成案も、発電コスト案も報じている。委員に示されたのは、国民の大多数が知った後だった。ほかの委員がなぜ怒らないのか、不思議でならない。
そもそも最初から倒錯していた。電源構成の議論は、今年1月30日の小委員会で始まったのだが、その前からメディア各社は「原発比率20%軸」「15~20%軸」「15~25%軸」などと報道していた。その後も、折りに触れて、原発や再生エネの比率が報じられた。
事務局の経産省は「うちから出た数字ではない」と否定したが、観測のために役所が流したとしか考えられない。私も省庁担当の記者をやったことがあるから、それぐらいのことは分かる。「審議会は役所の隠れ蓑」とは昔から言われることだが、最近、これほど露骨に利用された審議会も珍しい。
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