浅井文和(あさい・ふみかず) 日本医学ジャーナリスト協会会長
日本医学ジャーナリスト協会会長。日本専門医機構理事。医学文筆家。1983年に朝日新聞入社。1990年から科学記者、編集委員として医学、医療、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器開発、科学技術政策などを担当。2017年1月退社。退社後、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。公衆衛生学修士(専門職)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
飲み薬だけで高い効果 肝炎治療を変えるか?
1錠6万円という高額の新薬が医療現場に登場する。
米国の製薬企業、ギリアド・サイエンシズ社のC型慢性肝炎治療薬、ソバルディ(一般名・ソホスブビル)だ。5月13日に開かれた厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、1錠6万1799円の薬価が決まった。
同社は20日、ソバルディを25日に発売すると発表した。
近年、抗がん剤などで高額な新薬が増えてきている。患者数が少ない病気の治療薬では1瓶約364万円という注射薬もある。
その中で、ソバルディが注目されているのは、日本ではC型肝炎の患者が多いためだ。日本国内のC型肝炎の患者・感染者数は100万人以上にのぼるとみられる。新薬での治療を進めると、公的医療費負担としても巨額になる。
中医協資料によると、ピーク時で年間約1万9千人の患者が使い、販売額は年間約987億円に達する。
ただ、患者の費用負担の面から見ると、肝炎対策として患者への支援策があるため、国の助成制度の対象になり、患者の自己負担額は月額最大2万円になる。
C型慢性肝炎の治療は、これまでインターフェロンという注射薬が基本だった。これが飲み薬だけで治せるようになった。C型肝炎治療を大きく変える可能性がある。これまで副作用などでインターフェロン治療がうまくいかなかった患者、特に高齢患者の治療も広がる。
ソバルディの治療対象になるのは、C型肝炎患者全体の約3割を占める遺伝子タイプ2型。慢性肝炎だけでなく、肝硬変の軽い段階も含まれている。
1日1錠を別の飲み薬、リバビリンと一緒に12週間使う。
日本国内で実施された臨床試験(治験)では、患者140人に使われた。96.4%の患者で体からC型肝炎ウイルスを排除できた。ウイルス感染が治癒したとみられる状態だ。
なぜ1錠6万円という高額の薬価になるのだろう。
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