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中国は2050年に再生エネ電力85%

国連COP交渉はCO2削減競争から再生エネ導入競争へ

西村六善 日本国際問題研究所客員研究員、元外務省欧亜局長

 中国の国家発展改革委員会(NDRC)に属するエネルギー研究所と能源基金会は2015年4月、ワシントンで中国は今後、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(以下再生エネ)の強力な導入を図り、2050年にはエネルギーの60%、電力の85%を再エネで賄うという計画を発表した 。

 この計画における2050年の電力ミックスは以下の通りである。

 原発については、計算の便宜上、発電容量を1億kWとしたとしている。(2015年4月20日ワシントンのRFFでの中国側の口頭説明)

 中国の国家当局がこれほど野心的な長期エネルギー計画を発表したことは近年例がない。注目すべき点は下記の通り。

 まず何よりも目的を設定し、それに合致した政策を実行するというアプローチを採用している。 目標は「美しい中国」を建設し、人間と自然が共存できる社会を作ることだと明言している。その関連で、電力が人間の文明のために重要だとして、電力重視の姿勢を取っている。そして、電力の大部分を非化石燃料で賄うとして、特に風力と太陽光がその決定的な代替電力だと規定し、中国は風力と太陽光の分野で世界のリーダーを目指すと述べている。

「中国の風の谷」と書かれた看板の向こうに広がる平原に、風車が林立する「中国の風の谷」と書かれた看板の向こうに広がる平原に、風車が林立する=2011年6月、新彊ウイグル自治区ウルムチ市、吉岡桂子撮影

 このため、制度的な改革が必要で、何より電力市場を2025年までに作り、公平な再生エネの活用を図ることが重要だと述べている。技術面では、再エネの不定期性や間歇性等はIT、蓄電技術、デマンドレスポンス等で十分対応できる。そしてこの再生エネ85%計画は、わずかな追加コストで実現できるほか、膨大な雇用を新規に創出でき、石炭がもたらす社会コストを算入すると、はるかに経済的に実現できるとしている。

COP 交渉との関係

 今回の中国の政府機関の研究発表は、途上国において澎湃として起きている「再生エネへの突進」の最も顕著な例である。途上国は再生エネを大規模に導入し始めている。 例えば世銀は「Power Africa Initiative」を開始し、アフリカ担当の副総裁を指名して、アフリカでの再生エネの大量導入に主導的な役割を果たしている。ケニアのような大きな国でも、地熱発電で国内の電力需要の半分近くを生産できるようになっている。中東の産油国も再エネを導入し始めている。アジア、南米その他の地域でも再エネの導入強化は進んでいる。

 バングラデシュではムハマド・ユヌス氏(マイクロ融資で貧困撲滅に貢献し、ノーベル平和賞を受賞)が、太陽光パネルで農村を電化する大規模な運動を開始している。今や同国では1分間に2軒の勢いでパネルが設置されている。

 これをもたらした最大の要因は、

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