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続・中国は2050年に再生エネ電力85%

温暖化防止のために何を競争するべきなのか?

西村六善 日本国際問題研究所客員研究員

 前稿で紹介したような中国の再生エネの大規模な導入方針は、世界最大のCO2排出国の中国がやれば2℃実現に大きく近づくという文脈で評価する必要がある。

 また、それを可能にしている再生エネの価格破壊の「すざまじさ」にも注目する必要がある。最も重要なことは、中国が今後再エネを大量に導入することは、再生エネの「さらなる一層の価格低下」をもたらすという点だ。それは150カ国余りの貧困国はもちろんのこと、インドやその他の大排出国も、再生エネの大量導入を可能にするだろう。その結果、2℃の実現は、以前より可能性が高まったといえるだろう。国際的な温暖化防止努力を冷笑したり、否定的に見たりする理由はなくなりつつある。

負荷を回避する競争から、機会をつかまえる競争へ

 同時に、温暖化交渉自体も変化する可能性がある。それは安価になった再生エネの導入競争が主軸になるという方向性だ。

太陽光パネルを運ぶバングラデッシュの農民たち拡大太陽光パネルを運ぶバングラデッシュの農民たち(グラミン・シャクティのサイトから)
グラミン・シャクティ

 新しい競争では、安くなった再生エネを他国よりもより早く、かつたくさん導入した方が得だ。要するに再生エネが新しい「機会」を提供し始めた。これまでは、大きな削減をすることは、先進国経済にとって「負荷」だった。だから限界削減費用の均等などという話が一部で論ぜられてきた。 「負荷」ではなくて「機会」が生まれてくると、他国を差し置いても自国は再生エネを導入した方が得だ。限界削減費用などを論ずる時代ではなくなった。

 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)交渉の世界では、最近、「ネット・ゼロ」を2050年とか、2075年とかに実現しようとする空気が生まれている。これも再生エネが安価になることで、「ネット・ゼロ」が現実味を帯びているからだ。日本も根本的に展望を変え、再生エネ導入の新競争にまい進し、勝利するべきだ。

 しかし、実際のCOP交渉では依然として歴史責任論などで、交渉が紛糾する可能性はあり得る。再生エネ価格が、今後さらに下降し、今回発表になったテスラの蓄電池などが象徴するように、再生エネ管理技術が伝播して行けば、COP交渉も次第に、国別のCO2排出量の大小を問題とするよりも、再生エネ導入を助ける資金をどう確保するか、という方向に議論の重心を移すのではないか、と予想される。

全球ネット・ゼロを目指す

 再生エネの大量導入によって、どの国もその脱炭素化が可能になってきた以上、国際協力は新しい方式でやるべきだ。今までの方式は、先進国にとっては歴史責任に基づき、炭素スペースを途上国にどれだけ提供できるかというゲームであり、途上国にとってはそれをどれだけ分捕り、どれだけたくさん化石燃料を燃焼できるか、というゲームであった。

 しかし、このゲームでは合意が非常に難しい。だから過去20年近く混乱が続いた。

 一方、どの国も「再生エネへの突進」を進める時代においては、歴史責任で炭素スペースを分配するというようなゲームは、 ・・・ログインして読む
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筆者

西村六善

西村六善(にしむら・むつよし) 日本国際問題研究所客員研究員

1940年札幌市生まれ。元外務省欧亜局長。99年の経済協力開発機構(OECD)大使時代より気候変動問題に関与、2005年気候変動担当大使、07年内閣官房参与(地球温暖化問題担当)などを歴任。一貫して国連気候変動交渉と地球環境問題に関係してきた。現在は日本国際問題研究所客員研究員。

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