手探り続く教育現場--河合塾の全国大学調査で見えるもの
2015年05月26日
文部科学省が新しい学習指導要領で高校教育に取り入れる検討を始めたということで、アクティブラーニングに対する関心がにわかに高まっている。詳細は2016年度までに決まる見込みだが、一足早く導入が進む大学でも試行錯誤が続く。大学の実態を2010年から調べている河合塾教育研究部によると、「形だけの導入」から「本質を深く理解した上での実効性のある導入」に至るには大学でもまだ時間がかかりそうだ。
アクティブラーニングとは、受け身ではない、自分から行動する学びという意味だ。文科省の資料では「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」と説明されている。
河合塾教育研究部は、大学の教育力の調査を2008年から始め、2010年度からアクティブラーニングに焦点を当てるようになった。その第1回調査では、「そんな言葉は初耳」という声も大学教員からたくさん聞いたという。
ただし、言葉としては新しいものかもしれないが、「学生参加型授業」という取り組み自体は古くから大学教育の中で取り入れられてきた。たとえば、「ゼミ」では、まさに能動的に参加することが学生に求められているし、理科系の実験や実習も能動型授業の一つだ。
では、なぜにわかにアクティブラーニングが語られるようになったのか。それは、世界的に大学教育の基準を「教員が何を教えたか」ではなく「学生が何をできるようになったのか」に置く流れが出てきたからだ。大学教育の質をその観点から評価し、学生たちが国境を越えて自分にもっとも合う大学を選べるようにしようという動きが欧州を中心に広がった。
また、米国の名門マサチューセッツ工科大学で伝統的科目である物理にアクティブラーニングを取り入れたところ、理解度・定着度が格段に上がったという報告もあり、これが世界的なブームにつながった側面もありそうだ。
いずれにせよ、アクティブラーニングは「学生が何をできるようになったのか」の判定と一体の教授法・学習法だと理解すべきなのである。しかし、文科省もこの点を明確にしていない。「汎用的能力の育成」が目的で、体験学習やグループワークなどの手法が例示としてあげられているだけだ。文科省がこうなのだから、教育関係者がアクティブラーニングをきちんと理解していなくても当然なのかもしれない。
河合塾の第1回調査は、
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