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大学が率先して競争すべきなのか

広島大学が導入する「教員ポイント制」への違和感

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 国立大学をその特色に応じて分類しその役割を明確にするという方針が打ち出され、議論となっている。確かに、全国のすべての国立大学が横並びに総合大学を標榜するのは現実的ではない。それぞれの特色を前面に出した個性化と多様化の方針には賛成である。しかしながら、これは少子高齢化と国家財政問題を背景として、国立大学に交付されている運営費を削減するという方針とセットになっている。決して大学改革のために財政的支援を増やすわけではない。

 平成27年4月8日 に開催された「第3期中期目標期間における 国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会」の中間まとめには、各国立大学が重点的に取り組む機能と役割を3つに分類し、その中から1つを選択させた上でその強化の取組に対して支援を行う方向性が明記されている。 この3つの重点支援分類のどれを選ぶかで大学が事実上序列化され、総枠が同じ(あるいは減らされた上で)運営費が傾斜配分された結果、経営に大きな支障をきたすことを恐れている大学も多い 。

 さらにこの中間まとめの最後には、「機能強化の方向性に応じた重点配分に係る評価指標の例」として、3つの分類ごとにどのような取組を評価するかの具体例まで述べられている。それらの各項目に敏感に反応する大学が出てくるのも無理はない。

 この手の文書に対する人間の行動パターンは大きく分けて二つである。それを批判し反対する、あるいは、それに同調し積極的に対応する、のいずれかである。従来はその二つがバランスをとった結果として、何とか落ち着くべきところに落ち着いていたのではあるまいか。しかし、政治の場であれ、教育の現場であれ、かつては前者の批判勢力がそれなりに支持されていたはずの日本社会において、最近は後者の賛成推進派ばかりが目立っているような気がしてならない。

 実際、 広島大学は最近、教員ポイント制の導入を発表した。

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