急伸・中国が描く新しいエネルギー地図
2015年06月03日
世界の風力と原発の導入設備量の変化を見ると興味深い。原発は1990年代に入ってからはほぼ横ばい状態が続いている。一方、風力は2000年代に入って急伸(01~14年で約15倍)し、激しく原発を追い上げている。今年末までには設備量(出力)で風力が原発を抜くだろう。エネルギー史において画期的な出来事になる。
日本原子力産業協会のまとめによると、2014年12月末段階で世界で稼働中の原発は431基、3・92億キロワット。前年の3・86億キロワット(426基)から微増した。
一方、風力は3・69億キロワット。14年だけで約5150万キロワット増え、ほぼ原発と並ぶところまできた。(世界風力エネルギー協会=GWECによる)。左下のグラフを見ても両者の勢いの違いは明らかだ。
風力を追う形で太陽光発電も伸びてきた。今は1・76億キロワットと風力の半分ほどだ。最近の急速な伸びは発電パネルの価格の急激な降下によるところが大きい。今はいくつかの先進国で、太陽光による発電コストが電力会社から買う家庭の電気代と同じになる「グリッド・パリティー」が起きつつあることが急伸の背景にあるが、今後、もう少しパネルが安くなれば、一気に途上国に広がる可能性もある。
「エネルギーの大量使用で化石燃料が枯渇する」との危機感が広がったのは1960~70年代だ。そして当時、世界の多くの人が、「21世紀のエネルギーは原子力だ」と信じていた。核のゴミはやっかいだが、人類を救うエネルギー源は原子力しかない、ウランがなくなるのだったら、核燃料サイクル計画でプルトニウムを使えばいいというのが、常識だった。
1975年のIAEA(国際原子力機関)の予測では「2000年には世界の原発は20億キロワットになる」とされたほど、期待は大きかった。
原発の今後も読みづらい。増加が見込まれるのは中国やインド、ロシアなど新興国だ。一方、西欧と米国では10年以上も新規の運転がない。米国は長い間100基を超える原発を持っていたが、昨年1基が閉鎖したことでついに99基になった。
今後世界全体では伸びる方向に行くと見る意見が多いが、その伸び幅には大きな差がある。
今は設備量で原発と風力が並んでいるが、「発電量」でみると稼働率が高い原発の方が多い。いろんな資料をみると、概ね原発は世界の電気の約11%、風力は約3%、太陽光発電は1%以上をまかなっている。
「原発は横ばい・微増」「風力は原発を抜く勢い」「太陽光も大きく伸び始めた」。これが世界のトレンドだが、このすべてのトレンドを中国がつくっているといっても過言ではない。
この1年で世界では6基の原発が運転を始めたが、うち5基(544万㌔ワット)は中国だった。1基はインド。一年で5基のスタートとは異例だが、この勢いは今後も続きそうだ。世界では76基が「建設中」だが、うち26基が中国だ。
その原発よりもすさまじい伸びが風力発電だ。14年には世界の新規導入量の45%が中国だった。累積導入量1・14億キロワットは世界の3割を占める。低迷する日本の風力(279万キロワット)の約40倍だ。05年には約120万キロワットで当時の日本とほぼ同じだったが、今は昔である。
嵐のような風力の増加に隠れているが、太陽光発電でも累積導入量が2820万キロワットになり、ドイツに次いで2位になっている。
中国は原発も風力も太陽光も猛烈に増やしている。同時に巨大な国内市場をうまく使って、
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