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「病床1割削減」で大丈夫か?

2025年に向けた医療改革 データに基づく論議を

浅井文和 医学文筆家

都道府県別のベッド数の削減割合拡大
 団塊の世代が75歳以上を迎える2025年。国民は安心して医療を受けられるのだろうか。

 25年に全国の入院ベッド数を16万~20万床削減できるという政府の目標が6月15日、公表された。

 高齢者は若い人よりも病気になって入院する可能性が高い。年齢階級別の1人あたり医療費は、75歳以上になると20~25歳の10倍以上の医療費がかかる。

 これからますます進む高齢化で医療の必要性が増えるはずなのに、なぜ削減できるのか。不思議に思う人も多いだろう。

 推計によると、何も対策を取らないと、25年に全国で必要とされるベッド数(必要病床数)は高齢化によって152万床となる。

 しかし、自宅や介護施設で29万7千~33万7千人を受け入れられれば、必要なベッド数は115万~119万床になる。13年の134万7千床に比べて削減可能としている。

 在宅医療や介護サービス提供、介護施設などの充実が欠かせないというわけだ。

 都道府県別では、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、沖縄の6都府県はベッド数を増やす必要がある。神奈川県で15%増、大阪府で11%増、埼玉県で7%増だ。

 それ以外の道府県は削減できるという推計で、人口当たりのベッド数がもともと多い四国や九州では、3割以上削減できるとされた県もある。鹿児島県は35%減とされた。

 このような削減目標に対して、医療界からは「医療が必要な高齢者が行き場を失う」「削減はそんなに簡単ではない」「行き過ぎだ」との批判の声も上がっている。

医療ビッグデータを解析

拡大記者会見で必要病床数について説明する松田晋哉・産業医科大教授=6月15日、東京・永田町
 注目したいのは今後の医療政策を医療のビッグデータを駆使して分析したことだ。

 この必要病床数の推計結果を報告したのは、内閣の社会保障制度改革推進本部に設けられた「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」(会長=永井良三・自治医科大学長)だ。松田晋哉・産業医科大教授(公衆衛生学)を主査とするワーキンググループが推計を進めた。

 推計を可能にしたのは、「NDB(ナショナル・データベース)」と呼ばれる「レセプト情報・特定健診等情報データベース」など日本の医療に関する大規模データベースの存在だ。

 レセプト(診療報酬明細書)は、医療機関が公的医療保険の診療報酬を請求するために支払期間に提出する文書。手術や検査、薬などの詳細が患者ごとに記載されている。

 このうち、患者の名前などを削除して匿名化し、国のデータベースに集めている。レセプト情報の格納は09年度分から始まり、14年7月までに83億件のデータが集まっている。まさにビッグデータだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

浅井文和

浅井文和(あさい・ふみかず) 医学文筆家

元朝日新聞編集委員。1983年に朝日新聞入社。1990年から科学記者として医学、医療、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器開発、科学技術政策などを担当。2017年1月退社。連載記事「患者を生きる」「がん新時代」「認知症とわたしたち」などに参画。

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