メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

太陽系外惑星観測の次の一歩

宇宙人探しはもはやSFではない

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 1月に『宇宙科学計画の提案に見るお国柄』で紹介した欧州宇宙機関(ESA)の中型科学探査ミッションの最終候補3件が決まった。残念ながら私の提案したミッションは落とされたが、3件の中に個人的に「これは凄い」と思った提案があった。それは、太陽系外惑星の大気を赤外線で直接調べる『ARIEL』だ(図1)。

図1:ARIELミッション提案書の表紙。代表者はロンドン大学(UCL)の Giovanna Tinetti 博士

 今までに発見された2000個の太陽系外惑星のほとんどは、せいぜい密度と軌道が分かった程度で、実態は謎に包まれている。もしも知能の発達した宇宙人が我々の方を観測した場合、真っ先に地球の大気組成に着目して、ここなら生物がいるかも知れないと考えるだろう。何故なら、大気組成が他の惑星と全く異なるからだ。その意味で、大気成分の測定は太陽系外生命の探査の重要な一歩なのである。

 ミッションの選考委員は、今まで欧州の宇宙科学を引っ張って来た重鎮(元所長クラス)とESAのベテランエンジニアがなっているから、最終候補に選ばれるような提案は実現可能性という面も十分に吟味されている。つまり、予算内で確かに観測できる目処がついたということだ。この結果を見て、30年前まで単なる空想に過ぎなかった「宇宙人発見」が、私には時間の問題のように感ぜられた。

急速に進展する分野

 太陽系外惑星の研究の歴史は比較的新しい。太陽系外惑星がパルサーの回りで発見されたのは1992年で、普通の恒星の回りで発見されたのは95年だ。まだ20年ほどしか経っていない。この際に使われた技術はドップラー法である(図2)。

図2:巨大惑星が恒星の近くを公転している場合の恒星のふらつきと、それを地球からみた場合の視線速度。

 惑星の大小に限らず、

・・・ログインして読む
(残り:約2161文字/本文:約2813文字)