うわべだけのグローバル化よりも教育改革を
2015年07月17日
日本の国立大学が改革を迫られている中、大阪大学の国際化に過去6年、深く関与してきた。私は1960年に発明されたレーザーの大規模化・極限化により拓かれる新学術研究が専門である。大規模装置による科学研究の世界ではグローバル化は当然で、世界の研究者との協力と競争を模索している。大規模装置は必然的に大型予算となり、全学術分野の中での優位性を主張し、認められなければ実現しない。そして、予算を獲得した研究機関には世界中の研究者が利用のため集まる。知の拠点ができる。そこでは全てが国際的で同時に学際的でもある。
文科省は2008年、当時の福田康夫総理の「留学生30万人計画」方針演説を根拠に通称「グローバル30」という大学国際化の補助事業を公募した。阪大は学部2コース、大学院2コースの新設を提案し、採択された。とっくの昔から国際共同研究をしてきた私は、その大学院の「国際物理特別コース」の申請、制度設計に関わり、初代コース長を拝命することになった。そして5年間、コース長を務めながら、大学の国際化に関する情報や同僚の意識に注目してきた。
4年前には、新しく総長に選出された平野俊夫氏が「2031年の創立100周年には大阪大学は世界トップ10の研究型総合大学として輝く」と所信表明した。私の知る限り実現は無理だと直感し、総長に詳細なデータなど提供すべく、世界大学ランキングの背景や米国、欧州、アジアの大学の調査も行ってきた。
そして私は9月に早期退職し、ドイツ・ドレスデンの研究所に転職する。すると、国際化仲間が「遺言」を残せと、講演の場を用意してくれた。そこで報告した「阪大国際化への五つの課題」は、以下のようなものだ。
(1)教員自体の国際化意識が低い。国際化はボランティア教員頼みに堕している。
(2)優秀な留学生を経済支援する財源がない。十分な奨学金なくして質の高い留学生は確保できない(日本で最低限の生活には、生活保護者の受給月額13万円が必要)。
(3)一般に、阪大の学生・大学院生が英語での会話を避けたがる傾向がある。英会話力だけでなく、日本の歴史、文化、政治、経済などに興味津々の留学生に説明する「教養」に欠けているため、会話が成立しない。結局、大学内に留学生のコミュニティが出来てしまう。
(4)事務と連携した留学生の受け入れ体制ができていない。英語の読み書きができない事務員が国際部に配属され3年後には配置転換される。
(5)阪大教員の国際関係個人情報(どの国の研究者と共同研究しているかなど)のデータベース化ができていない。
これらの課題にどのような解決策の私案を出したかは
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