次世代に継承すべきことは何なのか
2015年07月20日
「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録が7月5日に決定した。長崎でも、「軍艦島(端島)」等が選ばれており、地元では歓迎のニュースで沸いた。
しかし、この選定過程において日韓で対立が起きたため世界遺産委員会での審議は異例の先送りとなるなど、想定外の展開にな った。実はこの問題は、韓国が「戦時中、朝鮮人が強制徴用された施設がある」として登録に反対し、その後日韓外相会談で合意に達したはずだった。結局、お互いに合意できる表現「forced to work(労働を強いられた)」を用いることで合意に達したが、どうもすっきりしない。「NPO軍艦島を世界遺産にする会」の公式ウエブサイトには、近代化への貢献についての記述はあるが、当時の労働者の過酷な環境や犠牲者についての記述は見当たらず、その実態はあまり明らかにはなっていない。
実は、このニュースは、今年5月に開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議での日中間の対立を思い起こさせる。日本を含む軍縮・不拡散イニシャティブ(NPDI)の提言として、「核兵器のもたらす非人道的影響を学ぶために、被爆地広島・長崎への訪問」を訴えたのに対し、中国は「日本は他国を侵略した歴史や行った行動を認めていない。そんな国の提案を押し付けないでほしい」と文言の削除を要求したのである。再検討会議は最終文書に合意できず、結果的に採択されなかったものの、最終文書案には「被爆者や被爆地との直接の交流が重要」という表現で、日中間で合意に達したのであるが、やはりどこかすっきりしないところが残っている。
さらにさかのぼれば、昨年12月に米国がマンハッタン計画の国立公園化を決定した際、広島・長崎市長は、「原爆投下を正当化し、核兵器開発を推進することにつながるのではないか」との懸念を表した要請文を駐日ケネディ大使に送った。その後、5月に両市長が訪米した際、この計画を推進している米アトミック・ヘリテージ財団のケリー理事長と直接面談する機会があり、「国立公園化については、原爆がもたらした負の影響についても十分に学ぶような施設とすべく、今後も広島・長崎と協力する」との合意に達したといわれている。
今年6月2-3日に行われたマンハッタン計画70周年記念シンポジウムには筆者も参加したが、
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