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東芝の不適切会計1518億円、これだけか?

ウソくさい記者会見で膨らむ日本半導体界の雄への疑惑

湯之上隆 コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

 私は2002年に日立を退職した元半導体技術者であるが、ここ10年ほど東芝を応援してきた。東芝での講演回数は10回を超え、要請に応じて月に1回程度、助言するなどの協力もしてきた。それ故、歴代の3社長が辞任することになった今回の不適切会計には、大いにガッカリさせられた。と同時に、不適切会計は本当にこれだけなのかという疑惑を持った。本稿でその詳細を述べたい。

まるでブラック企業だ

 第三者委員会が7月20日に発表した調査報告書によれば、歴代3社長が「チャレンジ」と称する過大な利益目標を設定し、カンパニートップや子会社の社長にプレッシャーをかけたという。その事例には目を疑う。幾つかをピックアップしてみる。

 …2008年7月の四半期報告会及び8月の社長月例において、PC社から2008年度上期の営業利益の見込みに対し、西田厚聰Pはいずれも50億円の上積みを「チャレンジ」として求めた。これに対してPC社は、この「チャレンジ」を達成すべく、2008年9月、損益の大幅改善のためのODM部品(注1)の押し込み(注2)を実施した…(中略)…その後も継続的にODM部品の押し込みを実施し、西田厚聰Pの社長退任直後の2009年度第1四半期末には、Buy-Sell(注3)利益計上残高は、推計273億円にまで達した。

  2012年9月27日に開催された社長月例において、佐々木則夫Pは、PC事業を行うDS社に対し、残り3日での120億円の営業利益の改善を強く求めるとともに、検討結果を翌9月28日に報告することを求めた…(中略)…このような経緯の結果、佐々木則夫Pの社長退任時には、Buy-Sell利益計上残高は、推計654億円に達した。

 2014年2月、社長月例において、田中久雄Pは、「映像は第3四半期に折角ゼロになったのに第4四半期で赤字で元通りでは意味がない。なんとしてもゼロにするように。あれだけ構造改革をやっておいて▲46億円赤字とは言えない…(中略)…どんなことがあっても▲20億円までに納めなさい。…資金収支は前回悪化分+100億円改善チャレンジ」と指示している。

注1)ODM: Original Design Manufacturing、委託者のブランドで販売される製品の設計・開発・製造をおこなうこと
注2)押し込み: 委託者からODM先へ過度に高額な部品を必要以上に購入させること
注3)Buy-Sell: TTIP(東芝国際調達台湾社)が、PCの主要部品を各部品ベンダーより購入した上、ODM先に対して購入した各部材をODM先へマスキング価格(調達価格を上回る価格)により販売し、部品の支給を受けたODM先が自己調達品と合わせてPCを製造し、完成したPCをTTIPに納入するという、一連の取引

 報告書では、「東芝においては、上司の意向にさからうことができないという企業風土が存在していた」という。そのため、経営トップから「チャレンジ」のプレッシャー受けると、その下の社員は不適切な会計処理を継続的に実行するようになったと第三者委員会は分析している。

 恐らく、社長→カンパニートップ(または子会社社長)→事業部長→部長…というようにプレッシャーがかけられ、組織的に不適切会計を行うに至ったのだろう。これでは、まるでブラック企業のようではないか。

ウソくさい記者会見

拡大東芝の会見には多くの報道陣が詰めかけた=7月21日、東京都港区、井手さゆり撮影
 7月21日に、辞任する田中社長および暫定的に社長を兼任する室町政志会長らが、記者会見を行った。私は、日経新聞のサイトの動画で全てを見たが、
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筆者

湯之上隆

湯之上隆(ゆのがみ・たかし) コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

1987年京大修士卒、工学博士。日立などで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、各種雑誌への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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