「日本版NIH」が難病研究を推進 末松理事長が語る
2015年08月10日
新しい遺伝子検査技術などを駆使して、このような「未診断疾患」「希少疾患」という難病を体系的に解明する取り組みが日本で7月からスタートした。
今年4月、革新的な医薬品などを目指し、医療分野の研究開発を推進する国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の新プロジェクトだ。
AMEDは文部科学省、厚生労働省、経済産業省の研究予算を一元化し、医療分野の研究開発を基礎から実用化まで一貫して推進しようとしている。
構想当初は米国立保健研究所(NIH)になぞらえて、「日本版NIH」とも言われてきたAMEDだが、今回は米国NIHの未診断患者プログラムから学んだ。
AMEDの発足から4カ月が過ぎた8月5日、初代理事長として指揮を執る末松誠氏(57)が東京で開かれた日本医学ジャーナリスト協会例会で「日本医療研究開発機構のミッションと展望」と題して講演し、難病研究などの構想を語った。
慶應義塾大学医学部長だった末松氏には、理事長就任が決まった直後の昨年11月にインタビューをし、記事をWEBRONZAに掲載した(「日本版NIH」で医療研究は変わるか?)。
その中で、「ゲノム研究と難病の研究は両方が組めば本当に難病や未診断疾患の患者に役立ちます」と、当初から難病・未診断患者の研究推進に意欲を示していた。
もともと、ゲノム解析を活用して原因不明の病気の患者に体系的に診断する「未診断患者プログラム」は、米国NIHのウィリアム・ガール博士らが2008年から進めてきた。
背景には、患者個人ののゲノム情報(全遺伝情報)をこれまでよりも安いコストで解析することが可能になったという解析技術の進歩がある。
どこの医師に診てもらっても何の病気か診断がつかなかった患者の症状の全記録をNIHの多数の専門家が多角的に分析し、必要な場合はゲノム解析をした。
このプログラムでは7年間の間に1万3千人の患者のデータが集まった。
このうち、1万人は既存の病気だった。患者ごとに病気の症状はさまざまなため、既存の病気でも診断がつかなかったわけだ。
残り3000人のうち、約半分は教科書に載っていない珍しい病気だろうと判断された。
その残り1500人は全く何の病気かわからないため、ゲノム解析も駆使した。
結局、60の今までにない疾患概念が新たにわかった。
ただ、ガール博士はゲノム解析することよりも、目利きの臨床医が症状をきちんとみることが大事とみているという。
このような希少な難病でも、原因が判明することで治療法が見つかって治ることがある。
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