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東芝危機:半導体技術者も不正に関与したのか?

室町会長兼社長は7月の会見でウソを言っていた

湯之上隆 コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

決算の再々延期なら上場廃止

拡大決算延期を謝罪する東芝の室町正志社長=8月31日、東京都港区の東芝本社、内田光撮影
 東芝は、8月31日に予定していた2015年3月期決算発表を再延期した。内部通報が相次ぎ、新たに国内外で10件程度の不正会計が判明したためだという。次の提出期限は9月7日となったが、もしこれにも間に合わなかった場合、投資家に注意を促す「監理銘柄」に指定される。さらに、それから8営業日後の9月17日にも間に合わなければ、上場廃止になるという。

 室町正志会長兼社長は、「万が一、期限通りに提出できない事態に陥った場合、進退問題も含めて考える」と発言した。企業のトップとしては当然のことだが、東芝が追いつめられているのは事実である。

東芝を支えているのは半導体技術者

 しかし、私は、上場廃止よりも心配なことがある。それは、一連の不正会計に、「まさか技術者も関わっていないよね?」ということである。

 特に半導体技術者、その中でもNANDフラッシュメモリを製造しているメモリ事業部の技術者はクリーンであって欲しい、と願っている。その理由は二つある。

 第一の理由は、東芝において、利益の源泉はNANDフラッシュメモリしかないということだ。2014年3月期の連結決算では、売上高6兆5025億円、営業利益2908億円であるが、半導体などの電子デバイス部門は売上高1兆6934億円、営業利益2385億円である。

 ここから分かるように、東芝の営業利益の82%を半導体が稼いでいる。その半導体のうち、システムLSIは赤字、ディスクリートはほとんど利益がない状態だから、東芝の利益のほとんどは、NANDフラッシュメモリに依存していると言える。

 第二の理由は、ちょっと乱暴なことを言うと、経営陣や経理担当者はいくらでも取り換えがきくが、数万人規模の半導体技術者をそっくり取り替えることは不可能であることによる。

 つまり、現在の東芝を支えているのは、NANDフラッシュメモリに関わっている技術者であると言える。したがって私は、例え東芝が上場廃止になったとしても、メモリ部門の半導体技術者が健全であれば、再起は可能だと思っている。果たして、メモリ部門の半導体技術者はクリーンであるか?

「上司に逆らえない企業文化」はどこにある

 第三者委員会の報告書によれば、歴代3社長が「チャレンジ」と称する過大な利益目標を設定し、カンパニートップや子会社の社長にプレッシャーをかけた。そして、東芝には「上司に逆らえない企業文化」が存在していたため、上記プレッシャーが原因となって、組織ぐるみで不正会計を継続的に実行するようになったと分析している。

 しかし、東芝に「上司に逆らえない企業文化」が存在していたということが、どうにも腑に落ちなかった。私は日立出身の元半導体技術者だが、東芝でかれこれ10回も講演を行ってきたこともあり、東芝の知人や友人は多い。彼らと付き合ってきた皮膚感覚からすると、官僚的な日立に比べて、東芝の企業文化は「自由闊達」であるように感じていたからだ。

 東芝の現役の半導体技術者に、その辺りのことを尋ねてみると、ある友人は

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筆者

湯之上隆

湯之上隆(ゆのがみ・たかし) コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

1987年京大修士卒、工学博士。日立などで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、各種雑誌への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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