山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員
スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
復興と節エネを象徴する五輪こそ日本にふさわしい
東京オリンピックを5年後に控え、新国立競技場に続いて、エンブレムも白紙撤回となった。
前者に関しては、あまりにもどんぶり勘定な計画が進められてきた。1000億円単位という、一般人の理解を超える金額がたたったに違いない。幸い、問題が大きく取り上げられて、最終的に白紙撤回せざるをえないところまで世論が盛り上がったのは喜ばしいことだ。
後者に関しては、逆に世論が「コピペ警察」に成り下がって、何の不正もない作品が撤回されてしまった。TPPで米国が主張する「著作権侵害の非親告罪化」に日本は妥協してしまったが、非親告罪化の弊害を前倒しで見てしまった気がする。
ともあれ、オリンピックが一種の白紙に戻った様相がある。現実には、新国立競技場建設の入札公募(と私は理解している)が、デザインをも事業者に任せる形で9月1日に始まっていて、それに先だって整備計画が8月28日発表されているが、東京オリンピックのありかたそのものを見直すには絶好の機会だ。
そこで、私は新国立競技場を東北に作ることを提案したい。そして、エンブレムも「東京のT」にこだわらず、復興「F、R」や自然との共存「E」をも考慮したものすべきだと考える。そうしてこそ、東京だけの独善的なオリンピックから、より国民を代表するオリンピックになるはずだからだ。
東京オリンピックに関しては、もともと東日本大震災や原発の問題と切り離せない面がある。
2011年の東日本大震災のあとに「これで同情票を見込める」といった本音が誘致関係者から漏れ聞こえた時、私は非常に不愉快だった。他人の不幸を、あたかも自分の不幸であるかのように宣伝して、その利益だけを享受する行為だからだ。しかし、現実に震災からの復興も誘致の名目に入ってしまった。
それならば、JOCは東北を主会場にすべきだった。当時の東北にオリンピックを誘致する余力などない。だからこそ、JOCが肩代わりで誘致し、東京はそのサポートに徹するべきではなかったのか。しかし、現実には東北にはアリバイ程度にわずかの競技しか予定されていない。
オリンピックのための新国立競技場に多少とも国税が投入されるのであれば、東北に投入してこそ復興との一石二鳥となろう。東京都の拠出分を国が肩代わりしても、全然おかしくない。復興予算だって何度も「使い切っていない」というニュースを聞く。世界は日本の「復興力」に期待している。それが世界の求める「日本らしさ」だ。
そもそも、東京オリンピックには誘致の段階から「一極集中を更に悪化させる」という反対論があった。にもかかわらずJOCは東京の立候補をサポートし、最後は政府も後押し、皇族まで駆り出した。東京が選ばれたのは、「日本だから」施設・運営に安心できるというのが主な理由だ。この時点で東京は日本代表という顔に変わった。
逆に言えば東京に競技を集中させる義理はどこにもないのだ。極論すれば開会式と閉会式だけ東京でやって、
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