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2015年ノーベル医学生理学賞はこれだ!

本命「ゲノム編集」より有望な研究を大胆予測

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

 今年もノーベル賞発表の時期がやってきた。ノーベル医学生理学賞の発表は10月5日に予定されている(ちなみに、この日は筆者の誕生日である)。そこで、恒例のノーベル医学生理学賞の今年の受賞者を占おう。

 去年の筆者の予想は、遺伝学の分野、特に21世紀の医療に欠かせないパーソナライズド・メディスン(個別化医療)またプリシジョン・メディスン(精密医療)に必須の「ゲノムマッピング・解読技術」の発明者であるDavid Botstein(デイビッド・ボッツティン)とEric Lander(エリック・ランダー)だった。外れてしまったものの、実は今年こそと密かに思ってはいる。しかし、同じ予想をしては原稿として成り立たないこともあり、新たな予想を本稿では述べる。

拡大

 誰もが「受賞するのでは」と思うのが「CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術の発明」だ。2012年〜2013年に、米国カリフォルニア大学バークレー校のJennifer Doudna(ジェニファー・ダウナ)(「d」の発音はほぼ舌の動きだけなのでカタカナ表記では省いた)、スエーデンウメア大学のEmmanuelle Carpentier(エマニエル・カーペンティア)、米国ブロード研究所・マサチューセッツ工科大学のFeng Zhang(フェン・ザン)により発明された技術で、これによりヒトを含む多くの生き物のゲノムを自由自在に、しかもアマチュアサイエンティストでも簡単にできる簡便さで編集することが可能になった。

 この発明は、あっという間に世界中に広まり、発明から2年しか経っていない現在(2015年)までに様々な改良が施され、医学・生命科学の分野の研究開発にすでに広く浸透している。この汎用性、幅広い浸透率は、遺伝子増幅技術PCR(ピー・シー・アール)の発明以来の勢いだ。ちなみにPCRの発明者であるKary Mullis(カリー・マリス)は1993年にノーベル化学賞を受賞した。したがって、多くの医学・生命科学研究者が、この3名を今年の本命と考えるのも当然だろう。しかし、筆者の予想は違う。

拡大PCRは国内でも広く使われている。写真は、新型インフルエンザ確認のために検体の遺伝子入りチューブを機械に入れるところ=辻外記子撮影

 筆者の今年の予想は、

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筆者

佐藤匠徳

佐藤匠徳(さとう・なるとく) 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)佐藤匠徳特別研究所 特別研究所長。独立行政法人 科学技術振興機構(JST)ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括・米国コーネル大学教授・豪州センテナリー研究所教授(兼任)。1985年筑波大学生物学類卒業後、1988年米国ジョージタウン大学神経生物学専攻にてPh.D.取得。ハーバード大学医学部助教授、テキサス大学サウスウエスタン医科大学教授、コーネル大学医学部Joseph C. Hinsey Professorを歴任後、2009年に帰国、2014年まで奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)バイオサイエンス研究科教授。2014年7月にNAIST退職後、2014年8月1日より現職。専門は、心血管系の分子生物学、ライブ予測制御学、組織再生工学。【2017年6月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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