夫婦共働きで豊かな生活、徹底している規制緩和
2015年09月30日
移住してみてわかったドイツという国の有り様の報告を続ける。
移住に先立ち、私は4月に雇用契約にサインした。給料はそれほどでもないが、研究者として最上級の待遇を頂き、満足だった。しかし、渡独前、税金や社会保障、保険などの額を差し引いた手取りの額を知って驚いた。少ない、というか税金などがとても高い。
こちらに来て税金が高い理由がわかった。ドレスデン市内から郊外まで張り巡らされたトラムとバスの全路線を自由に利用できる1ヶ月乗車券が58€(7830円)と安い。トラムもバスも頻繁に来るし、通勤時間も常に座れる。料金だけでは採算は取れない。さらに、機構長夫人から「博物館や美術館、オペラハウスや2つのオーケストラなどの雇用・維持を50万市民が支えている。税金が高いのは当然」と言われ、納得。同時に、高い税金は老人と若者が経済的に豊かに暮らせるようにも使われている。
手取りが低い理由がもう一つある。ドイツでは、一般家庭では夫婦共稼ぎが普通であり、専業主婦はいない。35年前にミュンヘンに住んでいたときも同じだった。知っているドイツ人を数えたら、皆、共稼ぎだった。だから、夫婦で働いて豊かな暮らしができるように賃金が設定されている。
ドイツと日本のGDP比較をしよう。日本は4.6兆ドルでドイツは3.9兆ドル。人口は1.27億人と0.81億人。一人当たりのGDPを計算すると3.6万ドルと4.8万ドルでドイツが3割強高い。これは、ドイツ人が日本人以上に働いているから数値が高いのではなく、共稼ぎが当たり前だからである。
男性の仕事に携わる時間は周りを見ても、ドイツがずっと短い。日本はだらだらと超過勤務しているだけで能率は低いと思われる。労働形態もかなり柔軟でフレックスが採用されている。研究所の秘書(正規職員2名)は小さい子供を育てる母として、朝は8時頃から働いて、昼には仕事を終えて帰宅することで、家事と両立させている。
欧州の移民の問題は、日本の将来の少子化による労働層が減少したときの外国人労働者の受け入れに関連して議論されることが多い。しかし、その議論の前にまずは夫婦が二人で働きながらキャリアを高めていける環境の整備が先決ではなかろうか。
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