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続・世界のエネルギー転換を図る米中

年末のパリでの気候変動交渉(COP21)は両国が主導する

西村六善 日本国際問題研究所客員研究員

 米国が、中国の県や地方都市と関係を強化しようとしていることは注目に値する。欧州も同じことを狙っている。

 なぜか? 

 中国のような大国のエネルギー転換は、文句なしに巨大ビジネスになるからだ。一例だが、中国の地方のエネルギー転換やエネルギー効率の拡大に関して、ソフトとハードの両面で一括受注を目指している。水事業の地域包括受注と永続的運営に似た図式で、大きなビジネスの機会があると見ている。

 これはオバマ政権にとっても重要だ。議会の保守派は、温暖化防止と再エネへのエネルギー転換は、米国の成長と雇用への足枷だと主張してきた。オバマ政権は中国を抱き込むことで、米国の成長と雇用に大きなプラスになることを示そうとしているのだ。

 

ホワイトハウス共同会見での習近平国家主席=2015年9月24日、ワシントン、ランハム裕子撮影拡大ホワイトハウス共同会見での習近平国家主席=2015年9月24日、ワシントン、ランハム裕子撮影
すでに両国間で官民、地方政府、学術、ビジネス等、あらゆるレベルで広範な協力が進行中だ。米国や欧州の学術機関、科学技術推進機関、専門家集団等は、中国のカウンターパートと共同作業を推進している。 温暖化・エネルギー関係の世界的なNGOは、ほぼすべて中国に事務所を持ち、内外の多数のスタッフが活動している。欧米の有力大学も中国の有力大学と協定を結び、人員と資金を提供し、共同研究や交流を進めている。MITと清華大学の共同プロジェクト等は、ほんの一例だ。中国の大都市で行われている排出量取引(C&T)は、欧州と米国と中国の専門家の共同作業の結果だと言っても過言でない。 米国と中国はこのサイトEUと中国はこのサイトを見れば、中国が米国や欧州とどれほど綿密に共同作業をしているかが鳥瞰できる。日中間でも同じような協力が進行中だ。本気でエネルギー転換を図ろうとする中国と、その大きなポテンシャルをめぐって、先進国間での競争は熾烈になるに違いない。

パリでの交渉へのインパクト

 もちろん、中国の内実やガバナンスの問題、統計の杜撰さ等、今後に向けて課題は多い。しかし中国と米国が、このような協力の精神を具体策で裏打ちしていることは、過去を知るすべての者にとって印象的だ。温暖化防止交渉に新しいダイナミズムを与えるものだ。勿論、中国がすぐに協調的になるとは思えない。途上国の盟主としての立場は維持して行くだろう。しかし、その盟主が以前よりも前向きになったことは、他の途上国にも刺激を与えるだろう。

 その結果、温暖化防止の国際的作業に消極的な勢力は、従来の中国の否定的姿勢に「言い訳」を見出すことはできなくなるだろう。そういう点で、この米中合意は重要だ。もちろん、最大排出国が責任ある行動に出るのは当然だ。もっと早くから、そうすべきだった。でも、それが始まったら、その他の国も行動しなければならない。日本はいつも「全員参加」を主張して前向きな行動を手控えてきたが、 ・・・ログインして読む
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筆者

西村六善

西村六善(にしむら・むつよし) 日本国際問題研究所客員研究員

1940年札幌市生まれ。元外務省欧亜局長。99年の経済協力開発機構(OECD)大使時代より気候変動問題に関与、2005年気候変動担当大使、07年内閣官房参与(地球温暖化問題担当)などを歴任。一貫して国連気候変動交渉と地球環境問題に関係してきた。現在は日本国際問題研究所客員研究員。

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