日本の大学国際化事業は見当はずれ、ランクを上げるためにやるべきこととは
2015年10月30日
文部科学省の事業「グローバル30(G30)」の主眼は、留学生や外国人教員の受入れを増やすことで、国際化の推進を図ることにあった。が、それだけではランクを上げることはできない。いや、的外れと評価せざるを得ない。
具体的な比較をしよう。THEでは、私が今年9月までいた阪大は250-300位にあり、日本で5番目。ところが、現在私が仕事をしているドイツは、同じ順位までに30の大学が名を連ねる(日本は100位以内に2校、ドイツは9校)。
確かに日本は、G30事業で留学生割合を大きく増やした。一方、欧州の主眼は、組織的に大学院生をEU内の他の国の大学で教育することにある。義務ではないが、将来研究者になりたい場合は、国外の大学院に行かないと教員のポストが遠のく。さらに、次世代が母国でなく「EUを母国」と意識する精神育成も目指している。
従ってEUの学生は英語を母国語並みに使いこなし、外国の大学院で学位を取得。好きな研究ができるところなら国を選ばず就職する。仏の友人曰く、「欧州では国籍に関係なく大学などに就職ができ、教員会議や教授会も英語で行う。だから、教員にはあらゆる国の優秀な人材が集まる」そうだ。
実はこの原稿は、プラハで国際会議に参加している最中に書いている。昼食をスイス・チューリッヒ工科大学(ランク9位、アインシュタインの母校)のイタリア人大学院生と共にした。彼の説明によると、「欧州でもスイス、オランダ、スウェーデンのような小さい国が院生への『給料』が高い。だから、私もイタリアの指導教官が止めるのを振り切りスイスに留学した」とのこと。確かにTHEランクで調べると、3国は大阪大学が入っている250-300位に日本が5校に対し、8, 13, 9校もある。国の人口比からすると驚異的だ。
米国、欧州の大学では「大学院の魅力」、「経済支援」、「地の利」も生かし、日本以上に国際化が進行中である。米国はAmerican Dreamの国であり、中国最高学府の精華大学の物理の先生から「物理学部生の90%は主に米国の大学院に進学する」と聞かされた。カリフォルニア大学バークレー校のデータを見ていたら「両親のどちらかが外国生まれという入学生の割合は66%に達する」という記述があり、驚いた。
妻と話していたら「ランキングなどどうでもいいじゃない。日本の教育を粛々とやればいいのでは」と言われた。たぶん、大多数の大学教員は同じ思いだろう。それも日本の将来のあり方の一つの選択。しかし、年額100億円近くの「スーパーグローバル大学(SGU)」事業予算が税金から投じられている事実を考えると、このまま傍観してもいられない。
そこで、私なりのランキング向上指南をさせていただきたい。日本にいる方は「とうてい実行不可能」と言うだろうが、あきらめるか、少しでも実行していくか、である。
まず、世界中の著名研究者による「評判」を上げるためには、
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