首相も自らコンピュータープログラムを作る時代に入った
2015年11月04日
202X年のとある日。斬新な料理が評判の、オープンしたばかりのレストランでランチを食べてみると、確かに抜群の美味しさ。これはもう三ツ星ものだと感嘆し、一体シェフは誰だろうと店の人に尋ねてみると、名前はピエールとのこと。ほお、フランスの方ですかと尋ねたところ、いえ、今年リリースされた最新の料理ロボットの名前で、少しだけ私がプログラムを修正したのです、という答えが返ってきた……
まるでSFのような話だが、これは着実に現実のものとなりつつある。実際にIBMが開発中のAI (人工知能)コンピューター「ワトソン」は、「きのこと苺の組み合わせ」といった驚くべき、そして実際に美味しいレシピを自在に創り出すことができる。いや、料理や味覚は人がもつ微妙な感性で決まるもので、機械が創作するなんて不可能だと見る向きもあるが、それは幻想に過ぎない。今や、あらゆる領域や活動が情報解析の対象となり、ソフトウェアとして再現・制御することが可能となりつつあるのが現実だ。
産業革命以降、私たちが発明した機械は、蒸気機関や自動車・飛行機のように、大量生産や高速移動など「人にはできないこと」を実現するためのものだった。ITについても同様で、19世紀末に国勢調査のような膨大なデータ集計用に作られたIBMのタビュレーティングマシンや、第二次大戦後、弾道計算用に開発されたコンピューター「ENIAC」のように、人力だけでは処理が難しい作業を補助するものとして開発された。
ところが、20世紀後半から続くITの進化は、 先に述べたAIコンピューター「ワトソン」や自動運転車のように、「人にしかできない」と考えられてきたことを実行する未曾有の機械を生み出しつつある。特にコンピューティング能力の飛躍的な向上と低廉化が、機械学習や深層学習(ディープラーニング)技術の成長を促し、AIの性能を急速に高めていることがこれを可能にしている。ここで注目すべき点は、イノベーションの中心が、ハードウェアからソフトウェアへとシフトしたことだ。
過去10数年間に登場し世界を変えたイノベーションの多くは、Google検索やGoogle Map、Amazon、Facebook、Twitterなど、物理的な形をもたないソフトウェア・プロダクトだ。iPhoneやAndroid等のスマートフォンも、OSやアプリケーションといったソフトウェアが大きな役割を果たしている。
Appleのティム・クックCEOも、先日米国ラグナビーチで開催された国際会議の席上、
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