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早稲田vs小保方氏のゆくえ

博士学位取り消しから見えたもの

浅井文和 医学文筆家

拡大記者会見する早稲田大の鎌田薫総長=11月2日、東京都新宿区
 未来の研究者を育てる日本の大学院教育は大丈夫なのだろうか。

 早稲田大学は11月2日、記者会見をして、小保方晴子・理化学研究所元研究員の博士学位の取り消しが確定したと発表した。

 一方、小保方氏は同日、代理人の弁護士を通じて、「指導過程、審査過程の正当性・公平性について大きな疑問がある」とするコメントを発表。

 このコメントに対して、早大は4日、「事実と異なる点と、誤解と思われる指摘がある」との見解を公表した。

 早大はこの見解で「小保方氏と争うことは全く考えていません」としているが、このまま終わりそうにはない。

 いったい、どうなっているのだろうか。

 早大は2011年、先進理工学研究科の大学院生だった小保方氏に博士の学位を授与した。

 小保方氏は2014年1月、STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)の論文を発表。

 同年3月には、小保方氏が早大に提出し国立国会図書館に収蔵されていた博士論文の一部がネット上の文章と酷似しているなどという問題点が指摘された。

 同年10月、早大は小保方氏に授与された学位を取り消すが、「先進理工学研究科の指導・審査過程には重大な不備・欠陥があったと認められる」として、1年間の猶予期間を設けて教員が指導し、博士論文を訂正させ、これが適切に行われた場合は学位を維持できるとしていた。

 それから1年。11月2日の記者会見で、早大は「猶予期間が満了し、学位の取消しが確定した」と発表した。東京都内のホテルで開かれた記者会見には鎌田薫総長らが出席し、質疑応答が続いて3時間にも及んだ。

早稲田大 「完成度に達していない」

 早大が発表した取り消し確定の理由はこうだ。

 指導教員の指示で、小保方氏から何度か博士論文の改訂稿が提出されたが、なされるべき訂正作業が終了しておらず、論文審査に付すべき完成度に達していない。

 その結果、先進理工学研究科は10月29日の運営委員会で論文審査に付すことができないことを確認した。小保方氏から求められていた猶予期間の延長には応じないことも決めた。

 10月30日の研究科長会を経て、博士論文として相応しいものが提出されないまま猶予期間が満了し、学位の取消しが確定したことを確認した。

 早大の説明では、昨年11月に2011年当時とは違う新たな指導教員を選んでいたが、小保方氏の事情で、今年6月になるまで指導を始められなかった。

 その後、指導教員らが3回にわたって小保方氏のもとを訪れて直接の指導をし、研究倫理教育もeラーニングで9月までに受講を修了させた。

 指導教員らの指示に従って小保方氏から何度か改訂稿が提出されたものの、それらの改訂稿は、なされるべき訂正作業が終了しておらず、「未定稿」の状態だったという。

 鎌田総長は「不適切な博士論文を放置しないという観点から、期間延長ができないとした」と述べた。

 記者会見では、完成度に達していないという判断について、「判断の理由は?」「科学的妥当性はどこで審査されたのか?」など質問が相次いだ。

 早大側からは「科学的根拠の記述が不十分」「細胞の由来などの記述が不十分」などという説明があったが、さらに具体的な説明には及ばなかった。

小保方氏 「指導過程、審査過程に疑問」

 一方、小保方氏は2日、弁護士を通じて、「今般の早稲田大学の決定について」と題するコメントを発表した。

 今回の審査過程について「前回の授与時判断と大きくかい離する結論であり、指導過程、審査過程の正当性・公平性について大きな疑問があります」としている。

 また、修正論文提出前から、担当教官によって、「今回は合格する可能性はとても低い」と伝えられ、「学術的な理由とはかけ離れ、社会的風潮を重視した結論を出されたことは明らかです」という。

 これに対し、早大は4日、「小保方晴子氏のコメントに対する本学の見解について」という反論を発表した。 ・・・ログインして読む
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筆者

浅井文和

浅井文和(あさい・ふみかず) 医学文筆家

元朝日新聞編集委員。1983年に朝日新聞入社。1990年から科学記者として医学、医療、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器開発、科学技術政策などを担当。2017年1月退社。連載記事「患者を生きる」「がん新時代」「認知症とわたしたち」などに参画。

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