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続・脱炭素文明への巨大投資が始まる

座礁資産化する化石燃料と急進する再生エネ

西村六善 日本国際問題研究所客員研究員

 エネルギー大資本は、いつも化石燃料への需要は今後相当長く高位で続くと論じてきた。 2040年でも75%程度を占めると論じていた。またIEAも「世界エネルギー・アウトルック2014」において「2040年時点のエネルギー供給の中で、化石燃料は4分の3を占める」と書いていた。 さらに、IEAは再生可能エネルギーの導入に関して、非常に抑制された予測をしていた。しかし現実には再エネは幾何級数的に伸びた。下記のグラフはそれを示している。

 世界エネルギー・アウトルック2014のエグゼクティブ・サマリーの2ページの冒頭に、以下の記述がある。"By 2040, the world’s energy supply mix divides into four almost-equal parts: oil, gas, coal and low-carbon sources." 化石燃料は、2040年全球エネルギー供給の75%を占める、と読める。

太陽光発電の予測と実際の差は大きい

 

太陽光発電のIEA予測と実際の導入量拡大太陽光発電のIEA予測と実際の導入量。実際の導入量(Historic)の方がはるかに多い=Carbon Trackerの資料
Carbon Tracker は、おおむねこう主張している。

 IEAも、大手エネルギー資本も、本来はパラダイム・シフトや非直線的変化に目を凝らすべき時に、単純に右肩上がりと想定した。世界の人口増加や経済成長等のマクロ・フレームワークの設定においてそうだった。 再エネが幾何級数的に伸張するとは想定しなかった。しかし現実は、中国の石炭ピークも近い。インドも再エネの大規模な導入を決めた。石油資本にとっての最大の命綱であるガソリン車の需要は、EVの急伸によりその希望が減衰している。「ガソリン車は2040年まで全盛」という石油大資本側の想定は、もっと早く崩壊するだろう。ガスはといえば、最終的には再エネのバック・アップになるだろう。要するに化石燃料への需要は壊滅するのだ。それにもかかわらず、化石燃料安泰論で投資家に対して新規の大型投資を正当化した。これが、投資家の行動を歪曲させ、彼らを成長産業の側でなく衰退産業の側に追いやった……。

 これについて、IEAは「予測」(forecast)したのではなく、政策決定者に一つのシナリオを提供したに過ぎないと説明している。要するにこれは単なるプロジェクションであり、政策当事者への指針に過ぎない。当然、他の径路があり得ると反論している。 しかし、このIEAの数値はあらゆる利害関係者によって利用された。国際会議でも引用されたし、日本でも再エネを抑制する脈絡で引用されてきた。

 この関連でエクソン・モービル社の姿勢が司法問題になっている。最近、公式の捜査を要求する文書が米国検察庁に送られた。同社の情報操作は古い問題だ。実はエクソン社は化石燃料の与える被害やリスクについて70年代から意識し、研究してきた。その過程でIPCCの会合にも参加していた。部内的には温暖化を放置すると破局的な事態を招来すると認識していた。しかし、社外的には気候変動を否定するグループに大量の資金を提供した。

 温暖化の科学への攻撃は、コーク兄弟が加わる前から主としてエクソン社の資金が「太宗」だった。同社は、米国の京都議定書参加に強硬に反対した。また、政府が温暖化措置を取ることに反対した。その結果、今日に至るまで温暖化否定論で世論を動かしてきた。同社は最近ようやく炭素税を主張しているが、これまで貴重な時間が失われてきた。

COP21議長を務めるファビウス仏外相が、各国の閣僚を引き連れ、建設中のCOP21会場を訪れた=2012年11月8日、パリ、香取啓介撮影拡大COP21議長を務めるファビウス仏外相が、各国の閣僚を引き連れ、建設中のCOP21会場を訪れた=2012年11月8日、パリ、香取啓介撮影

新しい道を選ぶ時が来た

 実は、温暖化を防止するには、これらエネルギー大資本とそれを支えている消費者すべてに納得してもらうことが必要だ。それは、COP交渉で中国やインドを説得するのと同じくらい必要だった。しかし、 ・・・ログインして読む
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筆者

西村六善

西村六善(にしむら・むつよし) 日本国際問題研究所客員研究員

1940年札幌市生まれ。元外務省欧亜局長。99年の経済協力開発機構(OECD)大使時代より気候変動問題に関与、2005年気候変動担当大使、07年内閣官房参与(地球温暖化問題担当)などを歴任。一貫して国連気候変動交渉と地球環境問題に関係してきた。現在は日本国際問題研究所客員研究員。

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