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科学的根拠に基づいた女性参画拡大策を

10年目のサイエンスアゴラ:日米フォーラムで新機軸

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 東京・お台場地域で科学と社会に関するシンポジウムや討論会、展示などが数多く繰り広げられるサイエンスアゴラが13日~15日に催された。10年目となる今回は、駐日欧州連合代表部やオーストラリアの団体など海外からの企画出展もあり、イベントとしての成熟と深化を感じさせた。米国立科学財団東京事務所と科学技術振興機構(JST)ダイバーシティ推進室が主催した「女性参画拡大を科学する」シンポジウムでは、日本よりずっと男女格差が小さい米国でも日本と同様の問題を抱えていることが明らかにされ、参加者たちは「科学的根拠に基づいた対策を取っていくべきだ」と語り合った。

 13日に開かれたこのシンポジウムの副題は「科学技術における多様な人材の参加」で、日米4人の論客が講演したあと、パネル討論が続いた。会場からも多くの質問や意見が出て、関心の高さを伺わせた。

 日本の男女平等度が先進国の中できわだって低いのは衆知の事実だが、科学技術分野でも女性参画はなかなか進まない。そこを変えるための方策のキーワードは「科学的根拠」だった。

さまざまな女性参画拡大策の逆効果について解説するシェリル・カイザーさん

 最初に講演した米国ワシントン大学のシェリル・カイザー准教授(心理学)は、ダイバーシティ(多様性)を広げるさまざまな対策は本当に役に立っているのかという問題を取り上げた。

 組織にダイバーシティが必要だということは、今や世界のコンセンサスになっている。公正という観点だけでなく、多様なメンバー構成の方が組織は活性化するという見方が多くの国で定着し、米国はクオーター制(一定の人数を女性や少数民族に割り当てる制度)などダイバーシティを広げる対策に先駆的に取り組んできた。だが、そうした対策には2種類の逆効果が認められるという。一つは「公正さの幻想」。対策を取っているのだから平等だ、という誤った認識を持ってしまう可能性がある。つまり、結果として男女平等が実現しているかは二の次になり、対策をとることだけで満足してしまうわけだ。もう一つは「能力不足の烙印(スティグマ)」。対策の恩恵を受けた=能力不足のしるし、と受け止められてしまう可能性だ。

 こうした可能性を社会心理学実験で確かめるのが米国流である。転職が多い米国では、就職面接もよく行われる。就職面接を想定して相手の能力を評価する実験をすると、優遇策の枠で雇用する女性に対する能力評価は明らかに低くなった。実験なので、同じ能力の人が面接にいっているのに、だ。

脅しが脳に与える影響について解説するチャッド・フォーブズさん

 デラウェア大学のチャッド・フォーブズ助教(社会心理学)は、男女のあり方に対する固定観念(ステレオタイプ)が脳に及ぼす影響について解説した。小さいころから

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