多数の著書・訳書を通じ、天文学を茶の間に届けた先駆け
2015年11月25日
天文学者の小尾信弥氏が2014年9月28日に89歳で逝去していた。「没後1年は公表しないでほしい」というご本人の意向があり、公表が今になったという。1950年代から天文学の本を数多く著し、若者たちに大きな影響を与えた。60~70年代にはテレビ出演も多く、「科学のセールスマン」と言われた米国の惑星科学者カール・セーガン氏と似た役回りを果たしてきた。92~98年は放送大学学長を務め、「葬送の自由をすすめる会」の顧問でもあった。
東京大学の2年生のときに敗戦を迎えた。理学部天文学科を卒業し、天文学が急速に発展、拡大する時代に東大教授としてテレビや新聞で解説に努めた。ジョージ・ガモフやフレッド・ホイル、アイザック・アシモフなどの啓蒙書を次々訳したほか、『宇宙を探る』『進化する宇宙』『ビッグバンって何だろう』など著書も数多い。
アポロが月に着陸した60年代、世間の宇宙に対する関心は高まった。だが、天文学そのものは古くさいイメージがあり、今のように人気がなかったと天文学者の杉本大一郎さん(東京大学名誉教授)は指摘する。「その中で新しいことを解説する本をたくさん出し、それらの本によってたくさんの人が啓発された。天文学の研究にお金を出してもいいと多くの人が考える基盤は、小尾さんによって作られた」
英国の科学ジャーナリスト、ナイジェル・コールダーの『爆発する宇宙 アポロ以後の天文学』をともに訳した元『科学朝日』編集長の森暁雄さんは
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