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エンジン故障の金星探査機あかつきが再挑戦!

金星軌道に入れれば、日本が惑星気象学のパイオニアになる

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 金星探査機「あかつき」が5年の年月を経て、再び金星に戻って来た。

拡大探査機「あかつき」のイメージ図。左奥が太陽。手前は金星=池下章裕氏提供

 「あかつき」は日本で2番目の惑星探査機で2010年5月に打ち上げられた。1つ目は1998年打ち上げの火星探査機「のぞみ」で、これは失敗に終わったから、「あかつき」には「のぞみ」のリベンジという意味合いもある。

 しかし、2010年12月に金星に近づいたとき、金星を周回する軌道に乗せるための軌道制御に失敗した。原因はメインエンジン(軌道を変えるためのエンジン)のトラブルで、その後の試験等を経て設計ミスだったことが分かっている。地上試験だけで宇宙で起こりうるトラブルを予測することの難しさを改めて浮き彫りにした。

 ともかくも、探査機は単に金星を通過しただけに終わった。しかも、その後のテストでメインエンジンが役に立たないことも確認された。普通なら、これで失敗・打ち切りだ。

拡大打ち上げ前の「あかつき」=2009年11月、東山正宜撮影

 だが、ミッションはそこでは終わらなかった。というのも、エンジンが正常に機能しなかったとはいえ、金星に近づく前よりも、金星周回軌道に乗りやすいような軌道に変わったからだ。しかも、メインエンジンが使えなくとも、探査機には姿勢を制御するためのサブエンジンがある。それを上手く使うことで、理論上は2015年末に金星周回軌道への投入が可能なことがわかった。

 思えば、「のぞみ」も小惑星探査機「はやぶさ」もエンジントラブルで予定が遅くなった。そして「のぞみ」は失敗したが、その教訓を生かした「はやぶさ」はエンジン破損・通信途絶という瀕死の状態から無事に戻って来たのである。「あかつき」に再度のチャンスが与えられたのは必然かもしれない。

 とはいえ、飛行時間が長くなればなるほど、トラブルの確率は高くなる。例えば、「のぞみ」は地球離脱のトラブルで、火星到着が予定から4年半のびて、その間に故障してしまった。のぞみが予定通り火星に着いていたら3年分のデータが取れていたはずなのに、と観測装置の各種試験のために何度も日本に足を運んだ私は悔しく思ったものである。だから、5年前の金星周回軌道への投入失敗のあと、再挑戦の機会が5年後と聞いた時、あかつきが果たして生き延びることができるか不安だった。それが無事に金星まで戻って来たのである。先ずはそのことを喜び、関係者の努力をたたえたい。

 もっとも、金星周回軌道に乗せないことには、本当の意味で喜べない。そして、それは簡単ではない。というのも、

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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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