世界の太陽光発電は、6年前のコペンハーゲン会議(COP15)から10倍増
2015年12月04日
2009年のCOP15の挫折から6年、11月30日から開催されたCOP21では、新たな気候変動対策の国際的枠組みがようやく合意に至る希望が生まれている。これまでのCOPとの一番大きな違いは、言うまでもなく世界第1、第2の温室効果ガス排出国である中国とアメリカが、合意に向けて積極的な姿勢を示していることだ。
同時に見るべきなのは、COP15が開催された2009年から今日まで、世界では自然エネルギーの拡大が進み、その結果、温室効果ガス削減対策を実施するハードルが大きく下がってきたことである。
COP15の時に世界で導入されていた風力発電は、159GW(1.59億キロワット、原発159基分)であったが、本年12月末時点では、420-425GW、2.6倍程度にまで増加すると考えられている。
太陽光発電はさらに劇的な成長を遂げた。2009年末、世界全体で設置されていた太陽光発電は23GW(2300万キロワット)にすぎなかった。それが本年末には、230GW(2.3億キロワット)を上回るレベルに達すると見込まれている。コペンハーゲンからパリに至る6年間で、世界の太陽光発電設置量は10倍化したことになる。
自然エネルギー拡大の効果は、2014年、世界が経済的に成長したにもかかわらず、始めて二酸化炭素排出量が増加しなかったことにも表れている。経済成長と排出量増加を切り離す「デカップリング」が実現し始めたのだ。
しかし、自然エネルギー拡大の意義は、これにとどまるものではない。真のインパクトは、量的な拡大に伴ってコストが大幅に低下し、気候変動対策の実施を経済的なメリットのあるものに変えつつあることだ。
世界の多くの国や地域で自然エネルギーの発電コストが、石炭などの火力発電よりも安価になってきていることは、以前にもこのWEBRONZAで書いた。最近のいくつかの事例を紹介しよう。
南米のチリで今年10月に行われた発電事業の入札では、風力は9.36~11.4円/kWh、太陽光の最安値は7.8円/kWhであり、いずれも石炭火力よりも安かった。インドで同じく今年9月に行われた太陽光発電の入札では、4.63ルピー(約8.5円)/kWhで、輸入した石炭による火力発電よりも低コストだ。
今年の7月にテキサス州の州都オースティンで行われた入札では、太陽光発電が4セント程度(税控除別)という記録的な安値を記録したが、同じテキサス州の都市、ジョージタウンでも太陽光と風力が火力発電よりも安価になり、市内の電力の100%を自然エネルギーで供給することが決まった。
英紙ガーディアンは、ジョージタウンの政策決定者の言葉をこう伝えている。
「私たちは地球を救うためにこれ(自然エネルギーへの転換)をやっているわけではない。競争的な電力料金を実現して消費者にとってのリスクを減らすためにやっているんだ」
テキサス州といえば、今年まで州知事の座にあったリック・ペリーが地球温暖化の進行すら否定する人物であったことで知られるように、とても気候変動対策に熱心な地域とは言い難い。そのテキサスで太陽光発電や風力発電の導入が急速に進んでいることは、価格低下によって気候変動対策のハードルが下がり、経済的にもメリットがあるものになってきていることを象徴している。
自然エネルギー電力が安価に手に入るようになったことは、2℃目標の実現に向け温室効果ガスの大幅削減をめざす世界の合意形成を容易にしている。しかし、自然エネルギーの豊かな可能性を全面的に活かし、気候変動の危機回避に間に合うように導入を加速するためには、三つの課題がある。
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