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分野を超えたつながりを作る米国のフェローシップ

2カ月の「大人の社会見学」に参加して見えてきた日本の問題点

中村多美子 弁護士(家族法、「科学と法」)

 「法と科学技術」をテーマとして、アイゼンハワーフェローシップという米国での2カ月のプログラムに参加した。裁判などの日程調整のため、事前にさまざまな関係者に2カ月留守にすると伝えたが、「留学ですか?」「研修ですか?」「取材ですか?」といろんな反応が返ってきて、「フェローシップ」という言葉の語感が伝わりにくいことを実感した。

 フェローシップという言葉は、我が国でもさまざまな文脈で使われるが、今回は、「人物交流プログラム」である。

 アイゼンハワーフェローシップでは、アイゼンハワー大統領を記念して作られた財団が毎年世界から32歳から45歳までの参加者を選出する。参加者は、make the world a better placeを合い言葉に、それぞれの分野の専門家たちと全米各地で出会い、議論を重ね、生涯にわたるネットワークを形成する(ほかにもいくつか種類がある)。

フェローたちの記念写真

 2015年4月から5月のフェローシップは、非常によくデザインされた、学際的、かつ、国際的な人物交流プログラムであった。参加したのは22カ国から25名で、専門分野は社会的起業、ヘルスケア、ジャーナリズム、金融、エネルギー政策、教育、情報など多岐にわたった。最初の1週間と最後の1週間は、参加者(フェローと呼ばれる)がフィラデルフィアに集結し、それぞれの体験を他のフェローや財団関係者やスポンサーと共有する。程度の差はあれ、母国での業務をやりくりしながらの滞在しているため、フェローどうしの会話を通じ、各フェローの母国での現場の様子もかいま見ることができた。

 最初の1週間が終わると、各フェローは全米各地を移動しながら、個別に1日平均3件以上のミーティングをこなす。ミーティングは、財団のプログラムオフィサーたちがそれぞれのフェローのテーマやリクエストをもとにアレンジするのだが、専門性の異なる25名の参加者に対し、膨大な数の的確なアポイントを個別にセッティングしていく、その手際のすばらしさには本当に舌をまいた。

 私も日弁連などで海外調査を担当するが、一番苦労するのは、

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