「テクノロジーが職の75%を奪う」と言われている時代の教師のあり方
2015年12月22日
2015年に日本中を明るく湧かせた出来事が何かと言えば、ラグビーワールドカップにおける日本チームの活躍を挙げる人が多いだろう。日本が優勝候補の南アフリカを破った試合は、世界のラグビーファンが選ぶ「W杯史上最高の瞬間大賞」に選ばれるほど、世界中から大きな喝采を浴びた。この快挙は、何よりもヘッドコーチのエディ・ジョーンズ氏の指導力によるところが大きいと思う。『テクノロジーが人類から雇用の75%を奪う』(マーティン・フォード著 朝日新聞出版)という厳しい予測まで出ている現在、指導者のあり方について私たちはもっとスポーツ界に学ぼうではないか。
最近まで日本がラグビー最弱国と思われていたことは、次の事実からもうかがえる。マンデラ大統領がラグビーを南アフリカの人種融和のキッカケの一つとして力を入れた姿を描いた映画『インビクタス』(クリント・イーストウッド監督)の中で、95年に日本がニュージーランドに17対145の歴史的大敗を喫したエピソードが取り上げられているのである。だからこそ、今大会で強豪国の南アフリカやサモアを破って4戦中3勝も挙げた日本チームの大躍進、大変貌ぶりは「クレバーな戦い方をするクールなチームだ!」と、世界中のラグビーファンを唸らせたのだ。
エディコーチが最初にやったのは、日本の選手たちの個性、すなわち強みと弱みの両方を正確に把握したうえで、どういう方向に選手たちを高めていけば他国と互角に戦えるチームになるのか、そのためにはどういうトレーニングや学習が必要なのか、そういった新しいラグビーのビジョンをシッカリ描くことだった。
これまで日本が強国と戦っても勝負にならなかった原因は、体格とパワーに劣っている点にあると指摘されていた。だが、だからといって体格とパワーの向上にただ努めても、元々それらに勝る他国に抜きん出ることは難しい。そういう方向で努力を続けさせるのではなく、日本選手たちが他国よりも勝っている点に注目した。すなわち、「すばしっこい、小回りが効く、器用、粘り強い、協調性に優れている」といった特性を活かすことに重点を置いた。その結果、他国とは違うスタイルのラグビーチームをエディコーチは創造したのだ。
日本の短所の中でも、「従順だが自主的な判断に欠ける」点だけは、試合を戦ううえで致命的になるので、徹底的に改善するよう取り組んだという。猛練習を続けてハードな目標をクリアし続けた選手たちも素晴らしいが、ラグビーに対して創造的な眼力を持ったエディコーチが果たした指導者としての仕事振りには脱帽としかいいようがない。
もう一つ、スポーツ界の名指導者の話をしたい。数々の
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