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総理、「脱炭素技術」は今そこにあります。

世界は自然エネルギー100%へ踏み出した COP21

大野輝之 公益財団法人自然エネルギー財団常務理事

 パリで開催された国連気候変動会議(COP21)は、気候変動対策の強化を求めていた環境NGOのメンバーも驚くような強烈なメッセージを世界に発した。世界の平均気温上昇の抑制目標として、産業革命前と比較して2度を大きく下回る(“well below 2℃”)ことを決め、更に努力すべきレベルとして1.5度目標も掲げた。

パリ協定は化石燃料時代の終焉を告げた

 パリ協定には、これらの実現に向けて、今世紀後半には実質的に温室効果ガスの排出をゼロにすることも盛りこまれた。協定の成立を伝えた英紙ガーディアンは、「化石燃料時代の終焉」という見出しを打った。温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素の排出をゼロにするためには、化石燃料を燃やし続けるわけにはいかないからだ。

 協定の成立を受けた安部総理の談話は、気候変動対策と経済成長を両立させる鍵として、「革新的な技術開発」を強調している。総理のパリ会議での演説では、その例として、水素技術と次世代蓄電池開発をあげていた。2度目標、1.5度目標の実現に向けて、技術開発が重要な役割を果たすこと自体は間違いない。しかし、パリ会議の場で、最も確実な排出ゼロに向けた技術として世界が注目したのは、これからの開発が必要な「革新的技術」ではない。今そこにある技術、自然エネルギーである。

COP21で化石燃料への補助金中止を訴える人たち=パリ拡大COP21で化石燃料への補助金中止を訴える人たち=パリ

会議の主役は自然エネルギー

 COP21の前からも、自然エネルギー関連団体や環境NGOの多くは、「自然エネルギー100%」という目標を掲げていた。パリ会議で特徴的だったのは、100%目標がより多くの主体に共有されるようになったことだ。

 気候変動によって深刻な影響を受ける途上国43か国で構成される「気候脆弱国フォーラム(CVF)」は、その首脳会合において、パリ合意によって完全に経済を脱炭素化し、2050年までに再生可能エネルギー100%の達成をめざすことに支持を表明した。また会議期間中に、英国、フランス、ノルウェーなどの合計3520億ユーロ(約4兆7千億円)の資産を運用する投資機関の連合が発足し、大企業に対し電力の100%を自然エネルギーに転換することを求めるキャンペーンを開始した。ニューヨーク、東京、ロンドンなど世界の1000以上の都市が参加する「持続可能性をめざす自治体協議会(ICLEI)」も、自然エネルギー100%を目標として掲げた。

 COP21の会場で、今世紀後半の排出ゼロに向けて、最も大きな存在感を示していたのは自然エネルギーであったと言って間違いではないだろう。世界各地で火力発電の発電コストを下回るほど安価になってきた自然エネルギーが、脱化石燃料の最も確実な担い手として認識されるようになってきたのだ。

原子力発電には脱炭素経済を担えない

 こう書くと、「二酸化炭素を排出しないエネルギー源には原子力もある」という意見が出るだろう。特に日本では、 ・・・ログインして読む
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筆者

大野輝之

大野輝之(おおの・てるゆき) 公益財団法人自然エネルギー財団常務理事

東京大学経済学部卒。1998年より東京都の環境行政を担当し、ディーゼル車排ガス対策、「温室効果ガスの総量削減と排出量取引制度」の導入など、国に先駆ける都の環境政策をリードした。2010年7月から3年間、東京都環境局長を務める。2013年11月より現職。2014年、カリフォルニア州からハーゲンシュミット・クリーンエア賞を受賞。著書に『自治体のエネルギー戦略』(岩波新書)など。

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