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国策と研究開発組織:相互依存の落とし穴

「もんじゅ」と「六ケ所再処理事業」の今後を問う

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長・教授

 暮れも押し詰まった昨年12月28日に文部科学省の「もんじゅ検討会」(有馬朗人座長)が発足した。原子力規制委員会が「もんじゅ」の運営主体の変更を勧告したためだ。前回の論考(12月14日)で、この勧告は研究開発全体の見直しの絶好の機会であることを強調した。運営主体だけが問題なのではない。注目すべきは、「もんじゅ」に限らず、青森県六ケ所村で進められている再処理事業もまた、行き詰まりつつあることだ。前者は国の研究開発組織、後者は民間事業体が担ってきたが、両者に共通するのは「国策依存」という体質である。この体質を打破しない限り、どちらも今後の展望は開けないのではないか。

日本原燃の六ケ所再処理工場=2011年、青森県六ケ所村

 「もんじゅ」を含む高速増殖炉サイクルが迷走してしまった一つの原因は、研究開発が手段ではなく目的となってしまったことにある。実は、この「目的」というのは「国策」と呼ばれるもので、いい意味で一貫性をもち、ぶれないプロジェクト運営を保証することになる。資金を心配する必要もなければ、自らが説明責任を負うこともない。いわば「政府のお墨付き」プロジェクトなのだから。

 これが、単なる言葉の遊びではない証拠として挙げられるのが、研究開発を担ってきた動力炉・核燃料開発事業団(動燃)、核燃料サイクル開発機構(サイクル機構) 、そして日本原子力研究開発機構(JAEA)までに至る「設置法」と呼ばれる法律である。最新の「国立研究開発法人日本原子力研究開発機構法」の第4条(目的)のところには、「原子力に関する基礎的研究および応用研究並びに核燃料サイクルを確立するための高速増殖炉及びこれに必要な核燃料物質の開発並びに核燃料物質の再処理に関する技術および高レベル放射性廃棄物の処分等に関する技術の開発を総合的、計画的かつ効率的に行う」とされている。

 国策は単なる飾り物ではなく、法律で規定された機構の目的なのだ。原子力研究開発で様々なテーマがあるなか、高速増殖炉サイクルだけが明記されている点に違和感を持つのは筆者だけだろうか? まさに「手段」が「目的」となっている証拠といえる。

 この法律が組織にとって、そして研究開発にとって意味するところは何だろうか? 

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