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送電線への優先接続を保証してこそ

日本の再生エネ、固定価格買取制度(FIT)の改革に必要な視点

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

 パリ協定で提起された、温室効果ガスを削減していくうえで、省エネと再生可能エネルギーの拡大は2つの大きな柱となる。その再生可能エネルギー拡大のうえで、日本では、2012年から導入された再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の制度見直しが行われており、今後の行方を左右する問題となっている。

 FITにより導入された再生可能エネルギーのうち、とくに、太陽光発電が95%以上を占め、事業用案件が認定されながら、運用開始が遅れている事案が多く、認定制度の在り方の見直しが検討されているが、問題はそこに限らない。

 再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会報告書案(2015年12月)によれば、改革の目的は、「エネルギーミックスにおける2030年の再生可能エネルギーの導入水準(22-24%)の達成のため、固定価格買取制度等の見直しが必要」とされ、解決すべき課題は3つあるという。

拡大固定価格買取制度で大きく増えた太陽光発電だが、政策は抑制の方向に動いている。

 (1) エネルギーミックスを踏まえた電源間でバランスのとれた導入を促進
(現状:FIT認定の約9割が事業用太陽光)


 (2)国民負担の抑制のため コスト効率的な導入を促進
(現状:買取費用が約1.8兆円に到達)


 (3)電力システム改革の成果を生かした効率的な電力の取引・流通を実現
(現状:電力系統面での制約が顕在化)

 要するに、太陽光ばかりが導入されて、そのための費用負担が多くなっているという事態を問題としているが、(3)電力系統の問題は、FIT自体の問題というよりも、日本の電力システム改革の問題である。

現在の問題点、なぜ太陽光だけが増えたか?

 私見によれば、日本のFIT制度の問題点は以下の6点を指摘できる。
 全般的な問題として、第1に日本のFITは、再生可能エネルギーの導入目標値について、「最大限導入」とされているものの、具体的な数値目標が明確ではなく、そのために原子力などとの「電源・ミックス」論として議論されているのである。

 さらに第2に、再生可能エネルギーの送電網への優先接続が原則として保証されておらず、特別措置法第5条において、「技術的理由」を根拠に接続を拒否できることになっている。

 ドイツでは、再生可能エネルギー法(EEG)とエネルギー事業法(EnWG)で、再生可能エネルギーを優先的に接続し、出力抑制は後位で考え、抑制する場合の補償措置などが明確にされているのである(後述)。

 つぎに、バランスの取れた再生可能エネルギーの導入という面で、太陽光の導入が9割以上になったのは、次の2つの理由による。

 第1に、各種の再生可能エネルギーの価格決定とその根拠は業界が提出したもので、価格調達委員会による審議があったものの、第三者による検証がなく、透明性と客観性が不十分であった。

 ドイツの太陽光の買取価格が20円/kWhになっている時に、日本の太陽光は40円/kWh代という約2倍の水準の価格設定を行い、「太陽光バブル」を招いたのである。

 第2に、経済産業省による設備認定制度が書類審査中心で、しかも買取価格は設備認定時のもので、実際の稼働はあとでもよいという「空押さえ」を許した。2015年1月の見直しで調達価格の決定時期について、「接続申込時」から「接続契約時」に変更し、接続枠を確保したまま事業を開始しない「空押さえ」の防止などは当然の措置である。

 さらに、導入促進制度の問題として、次の2点を指摘できる。

 第1に、これまでの制度上の不備を逆手にとって、「指定電気事業者制度」が導入された。指定電気事業者とは、接続申込量が接続可能量を超過した場合には、年間30日の出力制御の上限を超えた無補償の出力制御を前提として、再生可能エネルギーの系統への連系ができるよう経済産業大臣から指定された一般電気事業者のことだ。これが2015年から導入され、「30日を超えて出力抑制ができ、その場合は補償もない」ということになり、中小事業者や個人で再生可能エネルギー設備を導入する場合の融資保証ができないという事態を招きかねない制度となった。

 第2に、再生可能エネルギーの出力抑制を行うための計算根拠は、福島原発事故以前の原子力発電所の高い稼働率や、まだ稼働していない大間原発などの稼働を算入するなど「原発の最大限稼働」を前提にしている。そのうえで余ったスペースで再生可能エネルギーの導入可能量を考えるとしており、とても、「再生可能エネルギーの最大限導入」とはいえないものである(詳しくは拙著『ドイツの挑戦』日本評論社、第2部参照)。

小規模、家庭用太陽光は入札を避けよ

 以上の諸点から、提案されている改革案について検討する。

 1)「認定制度の見直しと未稼働案件への対応」では、「系統への接続契約締結をFIT認定の要件とする」という法改正が提案されている。ここで一番問題なのは、電力会社との接続契約において、技術的理由などで再生可能エネルギー優先接続が保証されず、かつ指定事業者制度が制度化され、30日以上の出力抑制についての無補償など、これまでの制度が続けられる点だ。これの改正こそが第1に必要だ。 ・・・ログインして読む
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筆者

吉田文和

吉田文和(よしだ・ふみかず) 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

1950年生まれ、兵庫県出身、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。北海道大学大学院経済学研究科教授を経て2015年から現職。北大名誉教授。専門は、環境経済学、産業技術論、主著『ハイテク汚染』岩波新書、『環境経済学講義』岩波書店、最近は低炭素経済と再生可能エネルギーの普及に関心を持つ。札幌郊外の野幌原始林の近くに住み、自然観察と散歩を趣味とする。

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