渡辺正(わたなべ・ただし) 東京理科大学教授
1970年東京大学工学部卒業。1976年工学博士。2012年東京大学(生産技術研究所)定年退職、名誉教授。同年より東京理科大学教授。著書・訳書は『常温核融合スキャンダル』、「ダイオキシン」、『「地球温暖化」狂騒曲』、『星屑から生まれた世界』、『教養の化学』など約180点。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
いつまで続く茶番劇
やや旧聞になる昨年暮れのCOP 21(パリ会議)は、例年どおり、途上国の「資金援助を!」と先進国の「まぁ冷静に…」の応酬が実体だった。購読中のS紙は、途上国の典型が「水没の危機にある島嶼(とうしょ)国」なのだと、同情心あふれる記事を何本も載せた。しかし過去およそ40年間、南太平洋のツバルもインド洋のモルディブも、潮位計データは横ばいのまま推移中だ。どこから「水没の危機」が出てくるのか?
パリ協定は、目標達成を義務化しないのに、196の国と地域がCO₂(二酸化炭素)排出削減を目指そうと合意したから画期的なのだという。だが排出削減の約束は、口先だけに終わるのではないか。温暖化の話になると途上国を装い、いま世界総排出量の約30%を占める中国も、意訳すれば「2030年までは出し続ける」と宣言した。
茶番劇が早く幕を引くよう願いつつ、「温暖化対策」の問題点を考えてみたい。