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誰がルネサスを買収するのか?

経営再建を果たした半導体メーカーの未来が見通せないわけ

湯之上隆 コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

 半導体メーカーのルネサス エレクトロニクス株を巡って、様々な企業が買収を画策している話が聞こえてくる。約70%の株を保有している政府系ファンドの産業革新機構が、その株式の売却を検討しているからだ。株式を一定期間売却できない「ロックアップ」契約が2015年9月末に解除され、加えてルネサスが2015年3月期に黒字化を実現し経営再建を果たしたと判断しての動きである。

 本稿では、どのような企業が、どのような思惑でルネサスを買収しようとしているかを示す。その上で、ルネサスにとって買い手はどこがいいのか私見を述べ、ルネサスが抱えている問題について言及する。

独インフィニオン・テクノロジーズ

拡大
 2014年の車載半導体の売上高シェアでは、ルネサスが1位(12.0%)、インフィニオンが2位(10.5%)である(図1)。ところが、5位のオランダNXPセミコンダクターズが4位の米フリースケール・セミコンダクタを約1.4兆円で買収し、合計シェア14.3%となってルネサスやインフィニオンを抜いてシェアトップに躍り出た。

 クルマの世界出荷台数は今後も増える。また、クルマの電子化が急速に進んでいる。さらに、自動運転技術も普及するだろう。その結果、車載半導体市場は今後も拡大すると予測できる。

 そのため、車載半導体メーカーとしては、市場シェアを拡大したいわけだ。NXPがフリースケールを買収した狙いもそこにある。

 そこでインフィニオンとしては、ルネサスを買収し、NXPグループを抜き返してシェアトップになりたい思惑がある。実際、インフィニオンとルネサスのシェアを合計すれば、22.5%となり、NXPグループを突き離すことができる。

 これに対してルネサスの遠藤隆雄会長兼CEO(当時)は、2015年11月21日、ロイターのインタビューに、「選択肢のひとつ」であり、「両社が組めば非常に強力な連合になる」が、「インフィニオンの傘下に入るということはあり得ない」と買収には否定的な見解を述べている。

中国・紫光集団

 2015年11月末に、米国の半導体業界誌EE Timesの記者から、「中国の紫光集団という企業がルネサス買収を画策しているようだが、この行方についてどう思うか?」という問い合わせを受けた。私はこのことにより、中国企業がルネサス買収に触手を伸ばしていることを知った。

 紫光集団は昨年来、世界の半導体企業を“爆買い”している企業である。“爆買い”の背景には、中国が世界の半導体の約1/3を消費しているにも関わらず自給率がたった12.8%しかないこと、習近平・国家主席が半導体の自給率向上のために「国家IC産業発展推進ガイドライン」を制定し「中国IC産業ファンド」を設立したこと、半導体製造技術を入手することにより軍事技術と宇宙産業で米国を凌駕したいこと等があるらしい(WEBRONZA、2015年11月17日)。

 私はEE Timesの記者に、「紫光集団によるルネサス買収は、トヨタ自動車が阻止するだろう」と回答した。その根拠を次に示す。

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筆者

湯之上隆

湯之上隆(ゆのがみ・たかし) コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

1987年京大修士卒、工学博士。日立などで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、各種雑誌への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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