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対話で入院も薬も減らせる?

精神病の治療法として注目集める「オープンダイアローグ」

瀬川茂子 朝日新聞編集委員

 精神病の治療法として「オープンダイアローグ」が注目されている。文字通りの「開かれた会話」で、患者、医療者、家族、友人などが話しあって危機的状況の解消法を探る。この手法で、入院や薬を減らし、病気の再発率を下げているという予備的な報告もある。オープンダイアローグを実践するフィンランドの西ラップランド地方にあるケロプダス病院から医師のカリ・バルタネンさんと看護師のミア・クルティさんが、昨年、来日した。東京で開かれたセミナーで語られた手法は、通常の医療の慣習と対極にあるように思えた。

拡大東京で開かれたオープンダイアローグのセミナーで、フィンランドから招かれた専門家が語った。
 オープンダイアローグは、1980年代からケロプダス病院を中心に取り組みが始まった。それまでは、ケロプダス病院でも、統合失調症などの精神病の患者は長期間入院するのが普通だった。その頃、患者家族の心理的なケアを始めたいと考えた職員が、患者の家族の話を聞くと、患者が入院した日のことを、たとえ15年前のことであっても昨日のように覚えていた。家族の一員が精神病院に入院することは、家族全体にとって大きなトラウマになっていた。そうならない方法を探る必要があると考えられた。

 医師が診断し、スタッフルームで治療法を決定し、看護師が患者に「半年間、入院です」などと一方的に伝える従来のやり方ではなく、患者の前で、家族も招いて、治療法について議論する新しいスタイルを導入することになった。

 それから、オープンダイアローグは、病院の外にも出て行く。患者が危機的な状況にあるときに、即時に柔軟に対応することが、何より重要だと考えられたからだ。精神病で危機的状況にあるという依頼の電話を受けると24時間以内にチームで訪問、その状況が解消するまで患者や家族、関係者と毎日のように対話を繰り返す。入院と薬はできるだけ使わないようにするが、患者の意思を尊重する。

 電話に出るのは、経験豊富で、地域をよく知っているスタッフだという。眠れないのか、自殺をはかるおそれはないのか、精神症状があるかなど、どういう状況か聞き、24時間以内に対応する。スタッフが2人以上で家庭訪問したり、病院で話を聞いたりする。

窓があいている 

 家族療法士(セラピスト)でもあるミア・クルティさんは、危機的な状況を「窓があいている」と表現した。 ・・・ログインして読む
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筆者

瀬川茂子

瀬川茂子(せがわ・しげこ) 朝日新聞編集委員

1991年朝日新聞社入社。大阪本社科学医療部次長、アエラ編集部副編集長などを務める。共著書に「脳はどこまでわかったか」(朝日選書)、「iPS細胞とはなにか」(講談社ブルーバックス)、「巨大地震の科学と防災」(朝日選書)など。

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