北海道電力、風力の導入可能量を低く抑えるおかしな計算
2016年01月29日
日本は2030年の「エネルギーミックス」(電源構成)の目標について、再生可能エネルギー22~24%、原子力20%と決めた。再生可能エネルギーのなかでは、太陽光が固定価格買取制度(FIT制度、2012年開始)の95%を占める。他の電源を増やすことが課題だが、今起きているのは、本来は再生可能エネルギーの主力と期待される風力を抑制する動きである。
前回(1月13日WEBRONZA「送電線への優先接続を保証してこそ」)論じたように、固定価格買取制度改革の提案で、風力などリードタイムの長い電源については「数年先の認定案件の買取価格まで予め決定」するよう提案されていた。風力などは「環境アセスメント期間(通常3―4年)の半減等、必要な規制改革に取り組む」「認定前であっても系統への接続申込ができるよう運用を変更」するとある。
一方、太陽光の導入を抑制するために、「指定電気事業者制度」が2013年から導入されている。指定電気事業者は、接続申込量が接続可能量を超過した場合に、出力制御の上限(年間30日)を超えた無補償の出力制御を前提として系統への接続ができるよう経済産業大臣から指定された一般電気事業者のことだ。すでに太陽光については、北海道電力、東北電力、九州電力などが指定されている。
ところが、今回、風力発電についても、この制度が、昨年12月16日の経済産業省の告示で北海道電力と東北電力に適用されることが明らかになった。つまり、「風力発電の接続が補償なく抑制される」という事態である。
そもそも資源エネルギー庁は、1年前の2014年12月18日に「再生可能エネルギーの最大限導入に向けた固定価格買取制度の運用見直し等について」を公表し、それに対応して北海道電力が「太陽光発電の接続可能量算定結果について」を公表していた(2014年12月16日)。 今回は、基本的にこれを引き継いだものであり、その前提条件の設定に大きな問題がある。問題点を再度確認したい。
(1)そもそも再生可能エネルギーの利用拡大の大きな転換点となった東電福島第1原発の事故を踏まえた条件の設定が必要であるのに、福島原発の事故がまるでなかったような前提が置かれている。2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」にある原発依存度を可能な限り低減させるという方針にも反する。
北電による前提条件は、泊原発3基が震災前の設備利用率(84.8%、計175.5万kW)で一年中稼働するとして、残りのスペースで再生可能エネルギーの導入可能量を考えている。いまだに再稼働できず、その目途もたっていない3基をベース電源とするという算定に基本的な問題がある。
(2)さらに出力抑制の必要性の根拠として、最小需要発生日の5月晴天日の日曜日を想定して、電力需要が最小になり、かつ太陽光発電の供給が最大になるという極端なケースで算定し、出力抑制を合理化しようとしている。
(3)再生可能エネルギーによる発電の出力抑制を最小限にとどめる方法としては、送電線による需要地への送電や揚水発電などの方法がある。にもかかわらず、北海道と東北を結ぶ北本連系線60万kWのうち、わずか5万kWを使うのみとしている。かつ揚水発電も太陽光発電が最大になる昼間には利用できないという想定である。
(4)また、風力の接続可能量を36万kWとしている点についても根拠が不十分である。北海道電力が以前から想定している設備容量740万kWの5%分(36万kW)と推定されるが、なぜ5%であるのか、全く説明されていない。
今回の出力抑制を検討した、経済産業省総合エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会系統ワーキンググループ(第7回)(2015年11月10日開催)における議論においても、委員のなかから、北海道電力については、とくに「30日等出力制御枠について、多すぎるのではないか」、「連系線の活用については、九州と異なり長期空き容量平均で計算している。1日前平均とすると改善するのでは」という批判的な意見が出ているのは当然である。
北海道電力は、風力発電の枠を36万kWとしているので、この時点で接続済みと申し込み済みを合わせて39万kWに達しており、接続可能量を超えているから、経済産業省の告示で、補償なしで無制限に出力抑制が可能となったのである。事実上、これ以上の風力発電は受け入れないという宣言に等しい。事業者は、融資もつかず、採算性も見通せないと報道されている(『北海道新聞』2016年1月18日付)。
そもそもなぜ、北海道電力の風力発電の接続可能量が36万kWであるのかについて、説得力ある説明がなされないままで、
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