名人に勝つのは来年かも、加速する人工知能の進化
2016年02月03日
先日、ニューヨークで、「人工知能の未来」(The Future of AI)というシンポジウムが開かれた。完全招待制で参加者は100人以下、会議の終了まで会議のプログラム自体も秘密で、終了後に内容を外で記事にしたりしてもよいが、誰の発言かは示さないこと(いわゆるチャタムハウスルール)という会議であった。
これは、ニューヨーク大学(NYU)の主催で行われた。実際には、NYU教授でFacebookの人工知能研究所の所長でもあるYann LeCun教授がホストで、Facebook, Google DeepMind, IBM, Nvidiaなどもスポンサーする、今時の人工知能メインストリーム系のインナーの会議であった。
Google会長のEric Schmidtのオープニングトークから始まり、ホスト役のYann LeCun、モントリオール大学のYoshua Bengio, Google DeepMindのDemis Hassabis、NvidiaのCEOのJen-Hsun Huangなどの講演とパネルディスカッションが2日間に渡って続くという非常に充実したもので、NYUのキンメルセンターのホールでのJazzを聞きながらのディナーも小規模な会議ならではのものであった。私は、初日のディナーは、Nvidia CEOのJen-Hsun Huang氏やモントリオール大学のYoshia Bengio教授らと、2日目のディナーでは、Demis Hassabis博士やプリンストン大学のDaniel Kahneman教授(2002年ノーベル経済学賞)といろいろ議論ができて、非常に面白かった。
会議では「大規模なオンライン上のデータから何ができるのか?」という話題と自動運転が、二大テーマとなっていた。特に、直前に開催されたラスベガスでのCES(家電見本市)から直接来た参加者も多く、自動運転の今後の展開に関する議論が一番盛り上がっていた。
そして、その文脈で話題になっていたのが、FacebookとGoogle DeepMindのコンピュータ囲碁への挑戦であった。ディナーの時に、DeepMindのCEOのDemis Hassabis博士が「囲碁で人工知能が人間のチャンピオンに勝つまであと何年かかると思う?」と聞いてきた。私は「チェスや将棋ほど時間はかからない。非常に早く到達すると思う。多分3年以内だろう」と答えた。その時に、人工知能システム同士で、対局させているので、加速度的に強くなっているなど、いろいろな議論がでて非常に盛り上がったのを覚えている。
そして先週、彼らの人工知能システムの囲碁における成果がNatureに発表された(Silver, D. et al., Mastering the game of Go with deep neural networks and tree search, Nature, 529, 484-489, 2016)。
彼らの開発したAlphaGoというシステムが、人間の有段者に勝利したのである。しかも、5戦5勝である。コンピュータが、囲碁の有段者(囲碁の欧州チャンピオン、ただし世界ランキングでは633位)に勝利したのは、これが初めてである。
その方法は、まず今までの大規模な棋譜のデータから、どのように石を打っていくのかを学習し、途中から人工知能システム同士での対局に切り替える。そして深層学習(Deep Learning)だけではなく、強化学習(Reinforcement Learning)と確率的な探索(Monte-Carlo Tree Search)も加えた複合的なシステムとなっている。
深層学習は、
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