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ロボットはもはや「ロボット」ではない

膨大な情報を自ら学習して行動する「まったく新しい存在」は社会を決定的に変える

山下哲也 エバンジェリスト、山下計画(株) 代表取締役CEO

 長崎県佐世保市のハウステンボスにある「変なホテル」。名前からユニークだが、このホテルの最大の特徴は随所にロボットが導入されている点だ。受付ももちろんロボット。それも2体のうち1体はバイリンガルの恐竜という奇抜さだが、実にスムーズに宿泊者に対応することができる。なぜなら、チェックインやチェックアウトの業務は、決められた情報を入出力しチェックするだけの機械的な作業だからだ。「変なホテル」ではこの他にも、荷物を運ぶベルボーイや荷物を預かるクロークもロボット化し、人件費を約3分の1に抑えることに成功している。

「変なホテル」のフロント。右は説明をするハウステンボスの沢田秀雄社長=2015年15日、福岡亜純撮影

 「変なホテル」が教えてくれるのは、高度に無人化された近未来の姿だ。これまで様々な分野でロボットが導入されてきたが、その性能と開発コストを考えると、ロボットは高価な割に実用性に限界があると考えられてきた。しかし、近年の技術革新がもたらす3つの潮流がこの限界を過去のものにしつつある。

 1つ目はコンピューターの高性能化と低価格化。かつてのスーパーコンピューター並みの能力をもち、全世界で20億人近い人々が利用するスマートフォンは、この流れを見事に象徴している。

 2つ目は全てのものがインターネットにより結ばれるIoT (Internet of Things)。スマートフォンはもとより、家電や車、クレジットカードや定期券など、あらゆるものにコンピューターデバイスが浸透し、インターネットを介してデータを収集することが可能となりつつある。この流れは、コンピューターの需要をさらに押し上げ、1つ目の潮流である高性能化と低価格化をより強力に加速させ、その廉価で高性能なコンピューターがIoTをさらに推進するという、正のフィードバックを生み出している。

 そして3つ目の潮流は、人工知能(AI)の進化だ。50年代に始まったAI研究は、先の2つの潮流により膨大なデータの収集・解析が可能となったことで、新しい次元に突入した。特に、AIが自らデータをもとに特徴量を生成し、これを分析して判断・学習するディープラーニング(深層学習、特徴表現学習)の開発は、AIの性能を飛躍的に向上させつつある。その成果は、囲碁ソフト「AlphaGo」が、昨年欧州チャンピオンと対局し、見事に破ったことで如実に示されている。

 この3つの潮流が重なることにより、

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