脱原発のために必要悪なのか? 追加施策は必要ないのか?
2016年02月29日
環境省が石炭火力の建設を認める方向に舵を切った。
今回の環境省の石炭火力容認は、原発一本やりだった方向からの転換という点では評価すべきだろう。とはいえ、世界の潮流である脱石炭に反すると批判もされている。特に、なぜ天然ガス(LNG)を使わないのか、という疑問は、発電のことを少しでも知っている人なら自然に持つだろう。しかしながら、LNG発電でも二酸化炭素は大量に出す。しかも天然ガスだっていつかは枯渇するのだ。そのため、多くの国民にその功罪が判断できないのが現状ではあるまいか。かくいう私も判断に迷っている。
そこで、議論の叩き台の一つとして、化学と物理の原点に戻って、論点を個人的に整理してみた。すると、環境省が見逃している問題点が見えてきた。本稿ではそれらを順次説明したい。
石炭の2つめの弱点は、それが固体であることだ。発電に必要なのはタービンを回すことで、それには、ワットがやったように水を温めて水蒸気にして使う「蒸気タービン」と、車のエンジンなどのように燃焼の際の膨張(爆発)で直接タービンを回す「内燃機関」がある。効率は、当然ながら、直接的な内燃機関のほうが良い。ところが直接タービンを回すには燃料がガス状でなければならない。その意味で、天然ガスは石炭より有利なのだ。
昨年の資源エネルギー庁の資料によると、天然ガス発電の効率が平均48%(最大54%)なのに対し、石炭火力発電は平均42%(最大45%程度)にとどまっている。これは技術発展を加味しても将来追いつくことはない。
このような背景を考えると、もしも火力発電を今後数十年使わざるを得ないなら天然ガス発電に切り替えていくのが環境的には正しい。
しかし、いかに天然ガスが石炭より効率が良いと言ったところで、二酸化炭素を排出するかしないか、という根本的な意味では五十歩百歩なのも事実だ。
そこで資源エネルギー庁が主張するのが、電源の分散の必要性だ。燃料を輸入に頼る日本では、輸入先の分散という意味で石炭火力がある程度の比重を占めるのも仕方がないのだろう。しかも、火力発電における天然ガスの比率は、日本はロシアとイタリアに次いで先進国3位だ。既存の石炭火力を更新する利点も否定できない。
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