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ドイツで思い知る日本の会議の無意味さ

意見を出し尽くして時間内に結論を得るのが「会議」だ

高部英明 ドイツ・ヘルムホルツ研究機構上席研究員、大阪大学名誉教授

 ドレスデンの研究機構(HZDR)に私が大阪大学を辞めて着任したことで、20年前に私が提唱した「実験室宇宙物理学」のプロジェクトをドイツでも立ち上げる方針を機構長が出した。まずは年間1億円程度で、欧州の大学や研究機関と連携しポスドク(博士研究員)と大学院生を20名ほど雇用する5年間の事業予算をヘルムホルツ協会に申請する。そのための第1回非公式会議を3月4日に開催した。私が代表となる「仮想的な研究所(Virtual Institute)」を設立し、活動しようという狙いである。

 本稿では、この会議を取り上げ、ドイツ式会議がいかに議論を尽くし予定の時間内で結論を出すか、その様子を紹介したい。日本の皆さんに会議のあり方を考える参考にしていただきたいからである。

会して議せず、これを「怪議」という

 幕末、官軍が江戸へ攻めてきている際、江戸城に徳川幕臣が集まり、どう対応するかの「評議」が何度も行われた。が、話し合いもうまくできず、何も決まらなかった。

 「会議」は明治期に生まれた言葉だ。そして、誰が言い出したか定かでないが、 「会して議せず、これを『怪議』という」と皮肉った表現がある。

 会して議せず、は以下のように続く。

 議して決せず(発言はあっても、議論が発散し、結論が出ない)
 決して行なわず(何とか決めても、決定事項が実行されない)
 行なって責取らず(決定事項を実施しても、長は責任を取ろうとしない)

 実は私が日本で在職していた大学の部局が正にこれであった。日本経済の不調も、このような日本的会議による時間の浪費がもたらしているのではないか。シャープや東芝は、保守的な風土の中、過去の栄光にすがって改革を怠り、社を傾けることになってしまったのだと思う。

素直な反応が科学の新展開に不可欠

 今回、私が経験した会議は、こうした日本での会議とは全く違っていた。

 議事進行は、

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