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「アルファ碁」圧勝の本当の衝撃度

我々に見えないものを見はじめている人工知能

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 google DeepMind社の開発した人工知能囲碁プログラムAlpha碁と世界チャンピオンクラスの韓国のLee Sedol9段の5番勝負が終わった。Alpha碁が4勝1敗で勝ち越すという衝撃的な結果であった。前回のWEBRONZAで、人工知能が、囲碁のトッププレーヤーに勝利するのは、「早ければ、数ヶ月で決着がつく。遅くとも、来年には、人間の世界チャンピオンに勝つ日が来るであろう」と書いたのだが、その予測の最速を超える速度で事態は進行している。

拡大囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁」と対戦する韓国の李世ドル九段=13日、ソウル、グーグル・ディープマインド社提供

 では、今回の対局から何が見えてきたのであろうか?

 テレビなどではAlpha碁は深層学習(Deep Learning)を使っていると解説されることが多かったが、単なる深層学習から、深層学習+強化学習(Reinforcement Learning)へと展開したことが強さの秘密であろう。Alpha碁は、深層学習、強化学習、モンテカルロ探索を組み合わせた人工知能プログラムである。大雑把に説明すると、深層学習は、盤面理解や打ち手のパターン分類などに使われ、打ち手の決定は、強化学習によって行われている。深層学習に関しても、まだまだ、解決しないといけない問題は山積している。しかし、最終的に確率的意思決定が必要な応用に関しては、強化学習が使われている。これからは、「深層学習+強化学習」の組み合わせを軸とした展開になることが、まず見えてくる。

 次に、対局の内容を見てみると、解説者が理解できない指し手が、しばらく後になって、意味がわかるということが繰り返し起きていた。また、囲碁の対局では、先読みのしやすい盤面の周辺部が主戦場となるのに対して、Alpha碁では、読みにくい盤面中央に気がつくと広大な領土を確保してしまうことが見られた。具体的な棋譜やAlpha碁のデータ解析などから実際に何が起きていたのかは、今後、論文として発表されることになると思う。特に、第二局のAlpha碁の38手目と第4局のLee Sedol九段の78手目は、囲碁の歴史に残るとも言われており、その解析が待たれる。

 ここでは、これが何を意味するのかを考えよう。

 今回、わかったことは、最先端の人工知能システムは、ある意味で、我々に人間には見えていないものを見ているという領域に入りつつあることだ。これは、単に状況認識にとどまらず、何をすれば、どういうことが起きるという未来を見通すという意味も含まれる。これは、非常に重要なことで、このレベルの人工知能の能力を使うことで、我々の意思決定の能力が飛躍的に高まっていくと考えられる(もちろん、第4局に見られるような人工知能の弱点もある。この議論は、別の機会に議論したい)。

拡大画像1

 画像1を見ていただきたい。深層学習ニューラルネットでは、 ・・・ログインして読む
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筆者

北野宏明

北野宏明(きたの・ひろあき) ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長。1984年国際基督教大学教養学部理学科卒業後、日本電気に入社。88年米カーネギー・メロン大学客員研究員。91年、京都大学で博士号(工学)を取得。1993年ソニーコンピュータサイエンス研究所入社、犬型ロボットAIBOなどの開発にかかわった。2008年に現職。NPO法人システム・バイオロジー研究機構会長を兼務。Computers and Thought Award (1993)、ネイチャーメンター賞中堅キャリア賞(2009)などを受賞している。

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