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日本の環境影響評価はなぜ定着しないのか

審査委員もはき違える制度の趣旨

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

 今、多くの風力発電(風発)事業が環境影響評価(EIA)手続きを進めている。特に北海道では環境影響評価審議会が扱う案件が多すぎて、委員から不満の声も聞かれる。毎月の委員会では謝金も出るが、事前に膨大な案件のEIAの配慮書、方法書、準備書、評価書を読みこなさねばならない。この「宿題」は無報酬という。同じ事業者が別の案件でほとんど切り貼りのような文書を用意することも多く、問題点を指摘されても誠実とは言い難い回答に終始することもある。かといって審査委員がおざなりに対応しては、大切な自然環境に重大な影響が出る事業を見過ごすことになりかねない。

 けれども、審議会の意見も過剰と思われるものも少なくない。彼らの意見はほぼそのまま知事や大臣名での意見に採用される。2012年に青森県津軽十三湖の風発事業では、毎年マガンが1000羽以上衝突するという環境大臣意見 が出された。

 2014年には、北海道のある風発事業に対して、「行政的に辞めろということは絶対できない。(中略)どうやって辞めてもらおうかというと(後略)」などと、事業をやめさせるためにハードルを上げて経済的にできなくなるように持っていくという趣旨の発言があからさまに議事録に公開されていた(後に削除された)。

青森県の広大なメガソーラー=松田撮影
  現在のEIA制度に個人的に不満を持つのは私も同じである。広大なメガソーラー(左の写真)はEIA対象事業ではない。それに対して出力1万kWの風発は第1種事業 で、問題の少ない案件でも手続きを簡略化できない。だが、不満があるからと言って審議会の委員の側が公然とEIAのルールを順守しないとすれば、この制度は成り立たない。

 日本のEIA制度は欧米より遅れているとも言われるが、それなら事業者にとって都合のよい制度かといえば、そうでもない。

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