「人工知能」というより「拡張知能」と見るべきAIの大躍進
2016年04月13日
AI(Artificial Intelligent=人工知能)といえば、先月DeepMind社のAlpha碁が、人間の囲碁王者に勝利したことが注目を集めたが、その可能性はいよいよアートの領域に及びつつある。
オランダの金融機関INGグループと、マイクロソフト、レンブラント博物館、デルフト工科大学らによるプロジェクト「The Next Rembrant」が制作した作品が先日公開され、世界中で話題を集めている。これは画家レンブラントの作品をAIで解析し、3Dプリンターにより再現・制作するプロジェクトだ。
過去のレンブラントの作品について、その構図や色彩はもちろん、油絵のタッチに至るまで精密に計測・解析し、その特徴についてAIによる機械学習と分析を行うことで、AI自身が全く新しいレンブラント風の作品を制作した。その出来上がりを見ると、素人目にはレンブラント自身が描いたものとしか思えない。
今から80年前、まだコンピューターがない時代に、オランダの贋作作家ハン・ファン・メーヘレンはフェルメールの作風を徹底的に研究し、自ら創作した贋作「エマオの食事」(現在、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館に収蔵されている)を描いた事件が起きたが、ついに機械もそのレベルに到達したと言えるだろう。
AIといえば、将棋や囲碁の対戦ソフトや完全自動運転車などに注目が集まっているが、感性が問われるアートや文学の世界でも、近年様々な研究が盛んだ。
例えば文学の世界では、公立はこだて未来大の松原仁教授らの研究グループが、数々のショートショートの傑作を生み出したSF作家・星新一の作品をAIにより解析・学習し、星氏の新作を作ることに挑戦している。また、音楽では、英国ケンブリッジ大学出身のEd Rex氏を中心とするチームが、昨年末にAIによりオリジナルの曲を作曲できるオンラインサービス「Jukedeck」を公開しているなど、その研究開発の勢いは止まるところを知らない。AIが著したベストセラー小説やヒット曲が当たり前になるのは、もはや時間の問題だろう。
これまでは、機械が音楽や絵画などの創作活動を行うことは難しいと考えられてきたが、The Next Rembrantをはじめとする様々なプロジェクトの成果は、近年、あきらかにAIの能力が人間の創作領域にまで達しつつあることを示している。AIは各種情報理論や統計解析、そして最先端ITにより構成されることから、その能力や適用領域を「科学技術」という枠組みの中で捉えがちだが、そうした境界はこれまで人間が自らの能力と理解力の範疇で定義したものに過ぎず、AIがもつ可能性には当てはまらないことに注意が必要だ。
人間が持ちえない強力な知的能力をもつAIにとって、
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