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イノベーションに本当に必要なのは技術ではない

スマートフォン開発史から浮かび上がる3条件とは

山下哲也 エバンジェリスト、山下計画(株) 代表取締役CEO

巨大な構造変化が本来の意味

 イノベーション。日本語では革新と訳される言葉は、最近ではちょっとした新技術や新製品、新しい試みにまで使われることが多い。しかし、元々は産業革命を起こした蒸気機関やインターネットなど、それまでの産業や社会構造を劇的に変える動きを意味するもので、そう頻々と起きるものではない。

 例えば、ここ数年話題に上がるGoogle glassやApple Watchなどの情報端末「ウェアラブル」は、年々製品数は増加しているものの、現時点では社会を大きく変える潮流にまで至っていない。つまり、イノベーションにはなっていない。

 その一方で、アイデアや製品自体は古くからあるものの、それまでさっぱり普及しなかったものが、ある時点を境にイノベーションへ転化するものもある。この十年弱で爆発的に普及したスマートフォンはその典型的な例といえる。

 イノベーションへと成長するものと、それに至らないものの違いはどこにあるのだろうか。今回はスマートフォンを例に、イノベーションが生まれる条件について考察してみたい。

イノベーションを生み出す三つの条件

拡大外国人観光客のためにスマートフォンを利用して多言語で案内できるようにした解説パネル=2016年4月、東京・池袋のサンシャイン水族館
 この10年で最大のイノベーションの一つはスマートフォンだと思う。その爆発的な普及は携帯電話市場を一変させただけではなく、社会の様々な領域で変革をもたらした。このスマートフォンの進化の経緯を見てみると、イノベーションの条件として以下の3つが浮かび上がる。

 一つ目は、「多くの人が必要としているものであること」。

 これは、一見単純だが実は奥が深い。というのも、この必要性はその製品やサービスが実際に登場するまで、ほとんどの人は気づかないからだ。自動車やパソコン、インターネットなど、過去の巨大なイノベーションはいずれも、それらが登場して使われ始めるまで、具体的なニーズとして話題にのぼったことはほとんどない。そのため、イノベーションの起点となる製品やサービスが登場した時、多くはその価値を見抜くことができず、むしろ過小評価され否定されることが多い。

 従って、この誰も気づいていないけれども誰もが必要とする未知のニーズをつかむことが最初の鍵となる。そのためには、 ・・・ログインして読む
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筆者

山下哲也

山下哲也(やました・てつや) エバンジェリスト、山下計画(株) 代表取締役CEO

NEC・Motorolaにて携帯電話のシステム開発に従事、NTTドコモではi-mode及びスマートフォン戦略担当として各種戦略提携・スマートフォン導入にあたるなど、20年以上モバイルIT分野を歩み、2012年に独立、ITイノベーションの研究及びビジネス開発支援を行う山下計画株式会社を設立。2015年より近距離無線の国際標準規格NFCの普及に向けた活動に取り組む。2007年 マサチューセッツ工科大学 Sloan FellowsにてMBAを取得。
Twitter : @tetsu_yamashita
Facebook : https://www.facebook.com/tetsuya.yamashita.90
【2017年3月WEBRONZA退任】

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